研究実績の概要 |
ニトロキシルラジカルは、分子上に比較的安定な不対電子を一つ持つ常磁性種で、核磁気共鳴における縦緩和時間(T1)短縮型造影剤として働く。ニトロキシルラジカルの還元によるMRI信号の消失に基づいて組織のレドックス状態を評価するレドックスイメージング法を開発し、放射線照射後の組織のレドックス変化を評価した。 代表的な六員環(piperidine系)ニトロキシルラジカルであるTEMPOL(4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidine-N-oxyl)、およびいくつかの脂溶性の異なる五員環(pyrolidine系)ニトロキシルラジカル、TEMPOLおよび3-carboxy-2,2,5,5-tetramethylpyrrolidine-N-oxyl (CxP: carboxy-PROXYL)、3-Carbamoyl-2,2,5,5-tetramethylpyrrolidine-N-oxyl (CmP: carbamoyl-PROXYL)、3-methoxy-carbonyl-2,2,5,5-tetramethyl-pyrrolidine-N-oxyl (MCP: MC-PROXYL)、acetoxymethyl-2,2,5,5-tetramethyl-pyrrolidine-N-oxyl-3-carboxylate (CxP-AM)、4-(N-methyl piperidine)-2,2,5,5-tetramethylpyrroline-N-oxyl (23c)について7 T MRI装置でマウス脳内の分布および信号消失の様子を比較した。その結果、TEMPOLあるいはMCPがレドックス造影剤として適当と思われた。マウス頭部(大脳部)にX線または炭素線を照射し、照射直後、1、2、4、8日後にMCPを造影剤としてレドックスイメージングによる脳内レドックス状態の観察を行った。その結果、X線照射2日後、炭素線の場合は1日後に脳内のレドックス状態に何らかの変化が起こることが予想された。
|