研究課題
平成27年度は前年度の課題であった、除去修復酵素OGG1を指標に塩基損傷による粒子線トラックの可視化を試みた。Neイオン線(LET~420KeV/μm)ではDNA二本鎖切断部位を反映しているH2AXのリン酸化の発光部位とOGG1の発光部位が重なる傾向は見られず、OGG1が照射部位以外でも観察されたため、培養細胞でのOGG1のフォーカスは放射線由来のものかどうかの評価が難しかった。また、粒子種を変えることでLETの依存的変化を調べた。Neイオン線ではLET約420keV/μmとArイオン線によるLET約1370keV/μmによるH2AXリン酸化部位の領域を比較した。実験回数の関係で、統計的な評価はまだできないが、LETが大きいArイオン線ではH2AXリン酸化部位の蛍光領域が大きいような結果が得られた。さらにDMSOを添加し、OHラジカルの影響を抑制した環境下でのH2AXリン酸化部位の領域を調べると、DMSO添加無しの場合に見られた、小さいH2AXリン酸化部位の領域がほとんど無くなっていた。最終年度ではLETの増加に伴うH2AXリン酸化部位の領域の広がりやDMSO添加によるH2AXリン酸化部位の領域を調べ、統計的な評価を行う予定である。また、LETをそろえて、核種の違いによるH2AXリン酸化部位の蛍光領域の違いについても結論を出す予定である。
3: やや遅れている
マシンタイムの配分の関係で予定していた全ての実験が行われなかった。また、OGG1による蛍光領域の測定がうまくきでず、実験条件の検討をすることになった。
最終年度は限られたマシンタイムの中で、バイオマーカーをH2AXリン酸化部位の蛍光領域に絞り、1)LET増加に伴う粒子線トラック構造の広がりの可視化、2)DNA損傷修復後の残存DNA損傷を反映したH2AXリン酸化部位の蛍光領域の可視化、3)DMSOを用いたOHラジカル抑制下でのH2AXリン酸化部位の蛍光領域の可視化、について実験回数を重ね統計的な評価をする予定である。
実験回数が少なかったため、予定していた実験経費ほど予算を使わなかった。また、学術会議への出席には運営交付金を使用して、出張をしたため、予算を使わなかった。
今年度は実験回数を前年度の不足分を追加して申請したため、繰越予算を使って実験をする予定である。また、今年度は所属機関に配分された運営交付金が少ないため、繰越予算を使っていく予定である。
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Mutation Research Genetic Toxicology and Environmental Mutagenesis
巻: 793 ページ: 41-47
10.1016/j.mrgentox.2015.08.003
http://www.qst.go.jp/