研究課題
Nrf2-Keap1経路を活性化することにより抗酸化ストレス酵素の誘導を図り、単離膵島の凍結保存・解凍時における酸化ストレスからの保護をラット、ヒト膵島を主に用い検討した。Nrf2-Keap1経路の活性化にはdimethyl fumarate(DMF)を用い、膵島単離後凍結前に添加し、非添加群と比較検討した。ラット膵島DMF添加群においては、非添加群と比較し、凍結保存膵島の解凍時に有意にHO-1、NQO-1などの抗酸化ストレス酵素のmRNAの発現が上昇することが確認された。解凍後のviability assayでは、添加群における7-Amino-ActinomycinD陽性細胞は非添加群より有意に低下した。グルコース負荷インスリン分泌試験においては、両群に有意差を認めなかった。しかしながら、ストレプトゾシン誘導糖尿病ヌードマウスへの膵島移植では、術後1、2、4、7日において、DMF添加群の血糖値が、非添加群に比較して有意に低下していた。術後2、4日目においてDMF添加群の平均血糖値が200㎎/dL以下となった。ヒト膵島への保護効果検討のため、ヒト膵島をアルバータ大学(カナダ)から提供を受けた。同検体を用いてラット膵島と同様の検討を行った。ヒト検体においてもDMF添加群ではHO-1、NQO-1のmRNA発現は上昇し、7-Amino-ActinomycinD陽性細胞は低下した。移植実験では、施行数(両群n=2)により有意差検討には至らなかったが、DMF添加群の平均血糖値は非添加群より低値となった。以上より、DMFを用いたNrf2-Keap1経路の活性化は、分離後膵島の凍結保存・解凍時の酸化ストレスから膵島を保護する可能性が示唆された。
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移植
巻: 52 ページ: 81-86
http://doi.org/10.11386/jst.52.1_081