研究課題/領域番号 |
26461908
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉本 博行 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20437007)
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研究分担者 |
園原 史訓 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (30745534)
林 真路 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (70755503)
神田 光郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00644668)
藤井 努 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60566967)
野本 周嗣 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (40300967)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフラマソーム / 癌 / 進展 / 発がん / 炎症 |
研究実績の概要 |
がんと炎症の間の関連性については以前より議論されてきたが、近年、様々な炎症状態がインフラマソームと呼ばれる新しい炎症経路を介していることが見出されてきた。インフラマソームには30種を超える分子が含まれるが、いまだ癌におけるインフラマソームの発現や変異型に関連する報告はなされていない。我々は消化器系がんの発症や進展におけるインフラマソームの役割を明らかにするために、本研究を立案・遂行している。先行して研究を進めている肝細胞がん(HCC)では、以下の成果を得ている。インフラマソーム構成分子のうち,パターン認識タンパクであるNLRP3,NLRC4,AIM2および実行タンパクであるCASP1の遺伝子を予後因子の候補として治癒切除HCC158例について腫瘍組織(HCC),背景肝組織(corresponding normal: CN)における候補遺伝子の発現を検討した。コントロールとして11例の転移性肝癌背景肝組織(super normal: SN)を用いた。NLRP3,NLRC4,AIM2の発現値はCNにおいてHCCよりも有意に高かった。また,SNとの比較でもCNは有意に高値であった。CASP1はCNでHCCよりも有意に高値であったが,SNとの間には有意差を認めなかった。NLRP3,NLRC4,CASP1のCNでの発現値中央値以上,未満で症例を2群に分けると,それぞれの発現が中央値以上の群は全生存期間において有意に予後不良であったが、AIM2の発現については予後との関連を認めなかった。このように、背景肝におけるインフラマソーム構成分子の発現上昇が予後不良と関連しており,これらの背景肝の発現は予後マーカーとなる可能性を示すことできた。ここまでの研究成果は、平成27年日本消化器外科学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のごとく、先行して研究を進めている肝細胞がん(HCC)では、研究計画時の予備データからのさらなる発展が達成されている。多検体、複数遺伝子の発現解析を要するため、ここまでに当初想定していた以上の労力と時間を要している。これまでに得られた解析手法・手順を活用して他の消化器系がん(食道癌、胃癌、結腸癌など)においてもインフラマソーム解析を拡大していく予定であるが、入口となる網羅的遺伝子発現解析の対象となる症例の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、大きく分けて2つの流れを進めていく予定である。1つ目は、肝細胞がんで発見した候補分子についてさらなる検討を進める。具体的には、ノックダウン手技を中心的に用いたin vitroでの機能解析を行う。それに加えて、周術期での全身状態における影響を検討するため、倫理委員会の承認を経て手術症例の術前,術後で採血を行い、周術期や合併症時,化学療法施行時の血液検体の核酸では、どのような分子の発現に変化を認め るかを網羅的に検討するために発現アレイを行い、インフラマソーム構成分子だけでなく他の炎症性分子,サイトカイン,血管新生誘導分子の発現変化を調べていく。2つ目は、同様の手技・手順を応用して、他の消化器系がんにおいてもインフラマソーム構成分子の発現が癌の状態にどのような相関性を有するかを順次、検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先行する肝細胞がん組織の解析完了までに、若干の達成度に遅れを生じており、そのため次年度使用額を生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
肝細胞がんにおいては有望な候補分子を同定することができたため、平成28年度に残る研究計画を遂行すべく、機能解析、血清中発現度の解析実験に繰り越した経費を使用する計画である。
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