研究課題
肝癌では、さまざまな線維化が共存し、癌の発症や進展をサポートしていると考えられているが、線維化に関連する腫瘍間質細胞の性状については、不明な点が多い。また、癌病変部の線維性変化が肝癌の治療抵抗性に影響を及ぼしている可能性も指摘されているが、これについても詳細は明らかになっていない。本研究では、腫瘍間質細胞を治療標的と位置づけて、癌部および非癌部の腫瘍間質細胞を細胞レベルで解析することにより、これまで「癌部」の特徴としてとらえられたり、また癌細胞の大きな変化に隠されていた腫瘍間質細胞の性状を明らかにし、肝癌の新たな治療戦略を見出すことを目標に研究を行った。従来の臨床検体を用いた解析は、「癌部」と「非癌部」を肉眼的に識別して採取し、バルクで検討を行っていた。しかし、「癌部」組織を顕微鏡レベルでみると間質の増生が認められ、主たる構成細胞は線維芽細胞、免疫細胞であった。そこで、レーザーマイクロダイセクションによって「癌部」の癌細胞と腫瘍間質細胞を分取して遺伝子発現解析を試みた。この解析によって、肝癌のうち胆管細胞癌は腫瘍間質に線維化関連遺伝子や免疫細胞のマーカー遺伝子が高発現する症例が多く、肝細胞癌では腫瘍間質の増生自体が軽度で線維芽細胞や免疫細胞の浸潤が軽度であることがわかった。胆管細胞癌の腫瘍間質に存在する線維芽細胞がTGF-βなどの液性因子を放出して癌の増生をサポートしていることが示唆された。これらの結果から、腫瘍間質の線維芽細胞は治療標的の候補であり、その活性化を抑制することで腫瘍の増生が抑えられる可能性があると考えた。新たな治療法として、線維芽細胞の膜受容体に対するアンタゴニストを用いて線維芽細胞の活性化を抑制することで、腫瘍の増生を抑制する治療法について、検討を開始している。
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