研究課題/領域番号 |
26461911
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井手 健太郎 広島大学, 大学病院, 病院助教 (50511565)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗ドナー特異的HLA抗体 / ヒト化マウス |
研究実績の概要 |
移植前にレシピエント血清中に抗ドナー特異的HLA抗体(DSA)が高度に存在する場合、移植後超急性拒絶反応をおこす可能性が高いため移植は禁忌とされている。また移植後に新規に産生されたDSAは治療困難な慢性抗体関連型拒絶反応を引き起こし、グラフト廃絶の最大の原因として深刻な問題となっている。本研究では脱感作療法および慢性抗体関連型拒絶反応に対する新規治療法の開発を目的とし、まず小動物モデルとして抗ドナーHLA抗体を産生するヒト化マウスの作製を行った。 1Gyの全身放射線照射を施した重度免疫不全マウス(NSG)に、ヒト骨髄、末梢血および臍帯血由来CD34陽性幹細胞をそれぞれ投与した。投与経路は静脈内もしくは脾臓内注射で行い、投与後4週以降2週間隔でマウス末梢血を採取し、フローサイトメトリーでマウス末梢血中にヒトT細胞(CD3), B細胞(CD19), マクロファージ(CD14)が検出されるか解析した。 その結果、ヒト末梢血由来CD34陽性細胞を投与した場合、マウス末梢血中にヒトT細胞、B細胞、マクロファージは検出しなかったが、骨髄および臍帯血由来CD34陽性細胞を投与した場合、投与後6週以降でマウス末梢血中にヒトCD19およびCD14陽性細胞が検出された。また静脈投与よりも脾臓内投与の方がより多くヒト細胞が検出可能であった。しかしヒトCD3陽性細胞は検出できず、さらなる投与方法の工夫が必要であると思われた。 今後は胸腺キメラモデルでT細胞を含めたヒト免疫構築細胞を有するマウスの作製をめざし、そのマウスにHLAの異なる末梢血リンパ球を免疫することで、抗ドナーHLA抗体を有するヒト化マウスの完成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗ドナーHLA抗体を産生するヒト化マウスの作製過程で、効率よくヒト免疫構築細胞を有するマウスを作製するための、ヒトCD34陽性幹細胞のソース(末梢血、骨髄、臍帯血)、投与量、投与方法(静脈内、脾臓内)の条件設定に想定外の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果より、ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を脾臓内に投与することで、ヒトCD19およびCD14陽性細胞を有するマウス作製は可能となった。今後は、まず胸腺キメラを作製した後にヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を投与することで、ヒトCD3陽性細胞の再構築が可能となるか否か検証を行う。そしてヒト免疫構築細胞を有するマウスにHLAの異なる末梢血リンパ球を免疫することで、抗ドナーHLA抗体を有するヒト化マウスの完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の最終的な目標は脱感作療法および慢性抗体関連型拒絶反応に対する新規治療法の開発であり、本年度はまず小動物モデルとしての抗ドナーHLA抗体を産生するヒト化マウスの作製であった。次年度は抗ドナーHLA抗体を有するヒト化マウスを完成させ、そのマウスにRituximabとBortezomibを同時に投与することで免疫不全に陥ることなく脱感作が可能であるか検証する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
抗ドナーHLA抗体を有するヒト化マウスの作製のための重度免疫不全マウス(NSG)の購入、ヒト免疫構築細胞解析のためのフローサイトメトリー用の抗体購入、RituximabおよびBortezomibの購入、血清補体化測定のための試薬の購入。
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