研究課題
移植前にレシピエント血清中に抗ドナー特異的HLA抗体(DSA)が高度に存在する場合、移植後超急性拒絶反応をおこす可能性が高いため移植は禁忌とされている。また移植後に新規に産生されたDSAは治療困難な慢性抗体関連型拒絶反応を引き起こし、グラフト廃絶の最大の原因として深刻な問題となっている。本研究では脱感作療法および慢性抗体関連型拒絶反応に対する新規治療法の開発を目的とし、まずヒト化マウスで抗ドナーHLA抗体を産生する感作モデルの作製を行った。重度免疫不全マウス(NSG)にヒト末梢血単核球を静脈内投与した翌日、放射線照射を施したHLA不一致のヒト末梢血単核球を腹腔内に投与し感作させた。腹腔内投与4週後にマウス血漿を採取し、Single beads assay法で抗HLA抗体が検出されるか解析した。その結果、腹腔内投与回数および細胞数の調整により抗HLA抗体が検出可能となったマウスを認めたが、抗ドナーHLA特異的抗体を十分検出するには至らなかった。次にレシピエント末梢血単核球をあらかじめ放射線照射を施したドナーリンパ球と混合培養し活性化させた後にNSGマウスに投与することで抗HLA抗体の産生が促させるか検討したところ、前述の方法よりも効率の良く抗HLA抗体が検出されるようになったが、抗ドナーHLA特異的抗体は検出されなかった。以上、これまで様々の手法により抗ドナーHLA特異的抗体を産生するヒト化マウスの作製を目指していたが、抗ドナーHLA特異的抗体を産生しないマウスが作製されたことより、これらの手法はレシピエントリンパ球のドナー抗原に対する寛容化を導いている可能性が示唆された。
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Human Immunology
巻: 78 ページ: 357-362
10.1016/j.humimm.2017.03.006.