D-アロース添加培養により分離後膵島のインスリン分泌能が有意に改善されることが判明した。このD-アロースによる膵島機能の効果改善の機序として、脂質過酸化反応の指標の一つであるmalondialdehyde(MDA)値を測定し比較検討したところ、D-アロース添加培養群の膵島中のMDA値がD-アロース非添加培養を行ったコントロール群の膵島中のMDA値よりも有意に減少していることが判明したため、D-アロースのもつ抗酸化作用が分離後膵島の機能改善の機序の一端であることが示唆された。アポトーシスの指標としてのカスパーゼ3活性を、同様の実験系を用いて比較したが、この活性には有意差は認めず、D-アロースの抗酸化作用による効果はアポトーシスの抑制という経路ではなく、何らかの別の経路での効果と考えられることが判明した(J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2016 Jan;23(1):37-42.)。 また、膵島を移植した糖尿病マウスに対して、D-アロースを移植直後より術後2日目まで投与する実験を行った。術後21日目の糖尿病治癒率を検討したところ、投与群では100%であったのに対し、対照群では45%であり、投与群の方が有意に治癒率が改善することが確認できた。この結果から、膵島移植後にD-アロースを投与することで、膵島の生着率を高める可能性が示唆された。現在はこの結果に対して、機序を解明するために、病理学的な解析を行っている最中である。
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