研究課題
固形癌のゲノム不安定性及び宿主免疫応答の相関を解析し、分子標的薬剤や化学療法と免疫療法を併用するImmunologic synthetic lethalityを誘導する革新的免疫療法の研究開発を目指して本研究を施行し、以下の知見を得た。①食道癌症例にて、グローバルなメチル化状態を反映するLINE-1のメチル化、p53の遺伝子変異の定性、SNP-CGHによるコピー数変異の解析及びloss of heterozygosity (LOH)の解析による染色体不安定性の定量を行った結果、炎症性サイトカインのIL-6や喫煙歴と相関のあるLINE-1の低メチル化は遺伝子のコピー数変異、つまり染色体不安定性と逆相関しており、リンパ節転移及びリンパ脈管浸潤との有意な相関、5年の全生存率の有意な低下、並びにp53の変異と相関することが判明した。②ヒト大腸癌症例の検討で、セツキシマブ併用FOLFOX6やFOLFIRI療法による前化学療法を施行された症例で、強いリンパ球の浸潤と腫瘍細胞のアポトーシスを認めることが判明した。化学療法と免疫療法の相乗効果を検討するため、大腸癌(CT26細胞株)マウスモデルを用いた前臨床的研究を施行した。化学療法としてFOLFIRI療法、免疫療法として抗PD-1抗体を投与したところ、相乗的な抗腫瘍効果を認めた。詳細な解析の結果、化学療法は腫瘍特異的T細胞応答を阻害するのでなく、腫瘍特異的T細胞の活性化を誘導し、抗PD-1抗体は腫瘍局所での腫瘍特異的T細胞による殺腫瘍効果の増強を誘導することで相乗的な抗腫瘍効果を発揮することが判明した。ゲノム不安定性は癌免疫編成による癌の免疫逃避機構を誘導する一方で、それを標的とする化学療法と免疫療法の併用効果はImmunologic synthetic lethalityを誘導する癌免疫療法となりうる可能性が示唆された。
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