ヒト羊膜を用いた再生医療として、昨年度はヒト羊膜上での初代ラット肝細胞培養を行った。実験方法としては、6週齢のWistar ratの肝細胞を分離し、冷凍保存していたヒト羊膜を解凍、処理後に、羊膜緻密層側・羊膜上皮層側にそれぞれ肝細胞を播種し培養した。また比較するコントロール群として、コラーゲンdish上に肝細胞を播種し比較検討した。培養肝細胞の機能評価として、培養液中のアルブミン濃度を測定することとした。コラーゲンdish上に播種した培養肝細胞は10日ほどでアルブミン産生能を失うのに対し、羊膜上に播種した肝細胞は、1ヵ月を超えてアルブミン産生能を保つことが分かった。また、羊膜の緻密層と上皮層とでは、肝細胞のアルブミン産生能の違いがあり、緻密層側へ播種した肝細胞がより高いアルブミン産生能を保つことが分かった。肝細胞機能維持のメカニズムを解明すべく、接着因子に着目し免疫染色を行ったところ、β1-インテグリン、E-cadherinなどの接着因子が確認できた。また、電子顕微鏡での接着状況の確認では、肝細胞-肝細胞間の接着としてデスモゾームの確認ができ、毛細胆管のような構造も確認することができた。 抗原性の極めて低い、ヒト羊膜上での肝細胞培養は肝細胞シートの代替としての可能性もあり、今後の肝臓に対する再生医療への一助となりうる。 また、今回の実験からヒト羊膜の培養基質としての今後の可能性を多いに期待できるものとなった。
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