研究課題/領域番号 |
26461919
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
蒲原 英伸 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (90398222)
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研究分担者 |
木下 順弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (30195341)
鷺島 克之 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40336235)
田代 貴大 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (00613340)
新森 大佑 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (70635789)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SIRS / CXCL8 / CXCR1 / CXCR2 / 細胞内輸送 / 好中球 |
研究実績の概要 |
生体防御反応として炎症が惹起されるが、全身性の反応としてSIRSとして認識されてきた。SIRSが不能な状態から、臓器不全を併発することを救急・集中治療の領域ではよく経験される。その重症化機序に活性化好中球の関与しているが、好中球の遊走性を制御するサイトカインのCXCL8の受容体であるCXCR1およびCXCR2を治療標的としての可能性について検証することが目的である。健常者から好中球を分離し、CXCL8の存在下に好中球の遊走活性が亢進することを最初に確認した。また、細胞内におけるCXCR1とCXCR2の発現をFACSにて解析すると、CXCL8の存在下においてCXCR1およびCXCR2の発現は減少した。この際、細胞全蛋白におけるCXCR1およびCXCR2は変化がなかった。このことは、CXCR1およびCXCR2はリガンドであるCXCL8が結合すると、細胞内にシグナル伝達されるとともに、受容体そのものが細胞内に遊走されることを示唆している。 また、NFkappaBの阻害剤であるCurcuminの好中球の遊走活性に及ぼす影響について検証したが、遊走活性が著明に抑制された。今後、受容体の細胞内移動の現象の意義を確認するために、Curcuminの遊走阻害活性を利用して検証をすすめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者からの好中球を培養し、CXCL8の遊走活性について検証を行った。chamber wellを用いてCXCL8の濃度依存性に遊走能が増加することを再度確認できた。この遊走活性中に好中球表面のCXCR1およびCXCR2の発現蛋白をFACSにて解析を行った。CXCL8の存在下にて細胞表面に存在したCXCR1およびCXCR2は減少した。この遊走反応中における細胞全体に存在するCXCR1およびCXCR2の発現量を検証した。CXCL8刺激後の好中球をエタノール固定後に、IntraPrep permeabilization reagentにて細胞表面に微小な穴を開け、透過性を亢進させ、その状況下でFACSを施行した。細胞全体におけるCXCR1およびCXCR2の発現量に変化はなかった。つまり、好中球がCXCL8により遊走活性を獲得している際にはCXCR1およびCXCR2は細胞内に移動していること(internalization)が示唆された。 さらに、SIRS(敗血症)の患者からの血液や体液(胸水、腹水、浸出液、尿、痰など)を採取し、lymph prepを用いて好中球を分離している途中である。特にSIRS患者からの好中球のCXCRの発現の解析を施行している。
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今後の研究の推進方策 |
NFkappaBの阻害剤であるCurcuminは、好中球の遊走活性を抑制するが、今後、CXCR1およびCXCR2受容体の細胞内移動の現象に関する意義を確認するために、Curcuminを用いてFACSにて検証していく。CXCR1およびCXCR2の細胞内輸送の際に、細胞内におけるCa2+の変化が確認できるので、こうした細胞活性とCXCRの細胞表面での分布状況を確認する。この解析はCXCRが好中球の活性に応じて細胞内においていかにtraffickingされ、recycleもしくはdestructionされていくかの検証に役立つと思われる。このCXCRのintracellular traffickingに関与する分子を免疫沈降、二次元電気泳動、LC-MALDIシステム等の方法により明らかにしていく。これらの解析を健常者およびSIRS患者における好中球にて施行し、その相違点なども明らかにしていければと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
健常者検体からの好中球の使用については充当に解析が進める状況にあるが、SIRS関連の患者の臨床検体からの好中球の分離にはRealtimeに行う必要があり時間を要する。また、患者選定(Informed consent等)も含めて採取には慎重に施行する必要があり、次年度に渡り解析の必要性がある。健常者からの解析を十分行った後、臨床検体を用いた検討を進める予定であるが、健常者の解析の中でFACS等を用いたCXCRの発現解析を主体に継続して予算が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
NFkappaBの阻害剤であるCurcuminは、好中球の遊走活性を抑制するが、今後、CXCR1およびCXCR2受容体の細胞内移動の現象に関する意義を確認するために、Curcuminを用いて検証していく。そのためにも以下の内容の研究費が主に必要となる見込みである。 血液から白血球を分離抽出するための試薬購入。CXCR1およびCXCR2受容体の蛋白・mRNAの解析のためのかかる試薬・キットの購入。CXCR1およびCXCR2の下流シグナル伝達に関連する遺伝子の網羅的解析のための試薬・キット・array委託等にかかる費用。細胞培養にかかり消耗品の購入。細胞刺激のためのサイカインとその測定のための試薬・キット購入。Autophagy等の機能解析のための試薬・キット購入。臨床データベースの整理と統計解析のためのコンピューターとソフト購入。研究成果の学会発表および情報収集のたまの学会参加にかかる費用。
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