研究課題/領域番号 |
26461926
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
笠原 尚哉 自治医科大学, 医学部, 助教 (50382891)
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研究分担者 |
小林 英司 自治医科大学, 医学部, 研究員 (00245044)
佐久間 康成 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10296105)
佐田 尚宏 自治医科大学, 医学部, 教授 (20261977)
三木 厚 自治医科大学, 医学部, 講師 (20570378)
安田 是和 自治医科大学, 医学部, 教授 (40158001)
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
藤本 康弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80335281)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリアミン / 短腸症 / 腸管免疫 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
雄性Luc-Tgラット8週令を用いて2/3小腸切除モデルを作成した。術後3週間の回復期間を設けて無作為に食餌中ポリアミン(PA)濃度別に4つの実験群(A群0%, B群0.01%, C群0.05%, D群0.1%)へと割り付けを行った。2週間後にsacrificeして空腸、回腸、肝臓、血液、糞を採取した。主なPAとして知られるputrescine、spermidine、spermineの血清、空腸組織、回腸組織中の含有量をHPLCにより測定した。PA摂取による腸管免疫増強作用を評価するために血清・糞中のIgAをELISAで測定した。組織標本を作製して空腸、回腸の絨毛高を測定・比較した。短腸症の晩期合併症である脂肪肝についても各群間で比較した。2週間各濃度PA摂取では各群間で体重に差はみられなかった。血液生化学検査血液(GOT, GPT, Alb, ChE)では特定の傾向はみられなかった。血清中のspermidine 濃度は摂取PA濃度依存性に増加した。putrescine、spermineは摂取PA濃度に応じて増加する傾向はみられたが有意差は認めなかった。空腸組織、回腸組織中のPA濃度では空腸putrescine濃度と回腸spermine濃度が摂取PA濃度に逆相関する傾向を認めたが有意差はみられなかった。血清IgAは摂取PA濃度依存性に増加した。糞便中IgAは摂取PA濃度に応じて増加する傾向をみとめたが有意差はみられなかった。空腸の絨毛高はA群と比較してD群で有意に増高していたが、回腸では有意差をみとめなかった。肝臓組織所見では、A群で大半の肝細胞に脂肪滴が蓄積をみとめた。脂肪滴の面積は小さいが肝細胞の風船様腫大・炎症細胞浸潤をみとめた。D群では正常肝組織と比較して変化は明らかではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
短腸症モデルラットは術後5週間と比較的短期間でヒト臨床で問題となる晩期合併症の一つである脂肪肝を呈することが判明し、本実験で作成した短腸症モデルラットがヒト臨床をよく反映するモデルであることがわかった。さらに経口摂取PA濃度に応じて①血清spermidineの値が上昇②残存空腸の絨毛高が増加③IgAの血清中濃度が上昇することが示された。PAは経口摂取でも濃度依存性に血中濃度が上昇して腸管粘膜以外の遠隔臓器にも分布して賦活化効果をもつ可能性が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
PA経口摂取により短腸症の晩期合併症である脂肪肝抑制効果が示されたことから、当初の実験プロトコールにあった各濃度PA食摂取期間を4週間に延長してその効果を検討する予定である。糞便中のPA濃度を測定してPAの経口摂取による吸収効率を算出する。糞便からDNAを抽出し16S rRNA解析を次世代シークエンサーを用いて行い、各群の腸内細菌叢解析を実施してPA摂取による腸内細菌叢の変化を各群間で比較する。さらに、PAが残存小腸の機能を賦活化する機序を調べる目的で小腸上皮の分化や恒常性に関与することが知られるGATA 転写因子ファミリーやHES1,NEUROG3,SOX9などの遺伝子発現についての解析を予定している。当初の予定通り、小腸移植モデルにおいて短腸症モデルで示された腸管免疫増強効果、脂肪肝抑制効果に関する各項目について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共有研究機器の利用により研究に必要な物品のコストが削減できたために当初の予定より支出を減らすことが可能になった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には冷保存小腸グラフト移植ラットのポリアミン摂取による効果の検討を予定している。移植後からポリアミン不含飼料群とポリアミン含有飼料群の2群に分けて飼育を開始する。術後0, 1, 2, 4週間目にIVISにて移植小腸の発光輝度を経時的に測定し、移植小腸の状態を可視化する。 冷保存小腸移植を行ったポリアミン不含および含有飼料の各群から術後0, 2, 7, 14日目に組織をサンプリングし、Total RNA抽出を行う。DNAマイクロアレイ解析を行い、網羅的遺伝子発現解析を行う。変動率が3倍以上の遺伝子とポリアミン代謝経路に関連する遺伝子を中心に候補遺伝子を選抜し「機能活性化」「組織再生」に寄与する経路を探索する。特に注目すべき因子が見つかった場合には、免疫染色により、発現細胞および領域を同定する。次年度使用額はこの際の抗体購入費に充てる。
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