研究課題
(1)CMV再活性化組織の同定:平成25年度の研究で感染性ウイルスが尿中排出されることを確認している。しかし再活性化がどこの組織で行われるかではない。そこで、CMV潜伏感染♀マウスを妊娠させ、出産後乳腺と唾液腺からDNAを抽出し、リアルタイムPCR法にてCMVの有無を確認した。その結果乳腺では平均35,920コピー/g(n=8)という大量のウイルスゲノムが検出された。唾液腺では平均333,600コピー/gのMCMVが検出された。しかし、再活性化ウイルスの腺組織での局在をin situ PCR にて試みたがこの方法ではウイルスゲノムは検出できなかった。結論:妊娠マウスでは唾液腺、乳腺で再活性化がおきていることが示唆された。それらが各臓器へ広がり、尿、母乳にウイルスが排泄されることがわかった。(2)MCMV潜伏感染マウスを妊娠、出産させたマウスの母乳を与えた新生仔マウスでは唾液腺、肝臓、肺に10,000-40,000コピー/gのMCMVhs検出され、再活性化したMCMVは感染性があることを明らかにした。(3)CMV再活性化に関する知見の多くはHCMV感染ヒト単球性白血病細胞株THP1/NT2D1で得られている。この系におけるMCMV、HCMV再活性化を調べる目的でMCMV(Smith株)およびHCMV(AD169株)のIE領域の下流にGFP遺伝子を挿入した変異ウイルスを作成した。しかしAD169株にGFP遺伝子を挿入した変異ウイルスはTHP-1細胞への感染効率が極めて悪いことが判明した。(4)計画外研究:ヒト母乳には高頻度で再活性HCMVが検出されるが、電子レンジで40秒加温するのみでウイルスエンベロープが壊され感染性HCMVを検出限界以下までにすることが出来た。現在、この加温の栄養学、免疫学的影響を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
(1)妊娠、出産において潜伏MCMVが再活性化しているが、その部位は乳腺に限定されたものではないことが明らかとなった。しかし、再活性化のウイルス量はin situ PCRの検出限界以下であった。母乳を用いた再活性化の検討はおおむね計画通りであった。(2)CMV再活性化の機序としては次の2つのステップが考えられている。1.Major Immediate /Early promoter (MIEP) 領域の非アセチル化ヒストンがアセチル化され、この領域の遺伝子が活性化される。2.さらにこのMIEP領域にNF-κB (Nuclear Factor -κB )、CREB(Cyclic AMP response element binding protein)、AP-1(Activator Protein-1)などが結合すると、下流にあるI/E遺伝子が活性化され潜伏CMVゲノムが 再活性化する。従ってこの再活性化の研究にはI/Eの下流にGFP遺伝子を組み込み、再活性化すると感染細胞が緑に発色する変異ウイルスの作成は必須である。現在、この変異ウイルスの細胞への感染率が悪く、このin vitro の系で予想外の時間がかかっている。
(1)CMV再活性化に関与しているとされるNF-κB、CREB、AP-1などの転写因子の妊娠、出産時の動態を調べることによりCMV再活性化に直接関与している因子を調べる。(2)MCMVをTHP-1細胞に感染させると、CMVが潜伏感染し、これにTrichostatinAを作用させ、遺伝子の脱アセチル化を阻害するとMCMVが再活性化することをわれわれは既に観察している。そこでGFPを挿入した変異HCMVをTHP-1細胞に感染させ、TrichostatinAを作用させて、HCMV再活性化の有無、およびNF-κB、CREB、AP-1などの転写因子の動態を調べる。
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昭和学士会雑誌