研究課題/領域番号 |
26461931
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石井 永一 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00193243)
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研究分担者 |
清水 章 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00256942)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝臓移植 / 動物実験 / 免疫応答 / 免疫寛容 / 拒絶反応 / 抗体関連型拒絶反応 / T細胞性拒絶反応 / 病理 |
研究実績の概要 |
ラット同所性肝臓移植モデルを用いて、移植肝臓の免疫寛容の獲得メカニズムについて検討している。DA-Lew間の肝臓移植では移植後11日前後で移植肝臓は拒絶反応により機能廃絶に陥る。DA-PVG間の肝臓移植では、移植肝臓は長期生着し、donor特異的に免疫寛容を獲得している。今年度は、機能廃絶に陥るDA-Lew間の9日目から11日目の移植肝臓と、免疫寛容を獲得し長期生着するDA-PVG間の移植肝臓で、炎症細胞が急激に減少する14日目から21日目で変動している蛋白に注目してアレイを用いて遺伝子発現解析を網羅的に行った。拒絶が進行するDA-Lew間の移植肝臓に比較して、免疫寛容が獲得されるDA-PVG間の14日目から21日目の移植肝臓で2倍以上増加している蛋白として Axl receptor tyrosine kinase, IL25, murinoglobulin 1, toll-like receptor 10, chemokine (C-X-C motif) receptor 6, transient receptor potential cation channelなど炎症反応に関連する蛋白を含め100種類以上の蛋白が同定された。逆に2倍以上減少している蛋白としてchemokine (C-C motif) receptor 1や ligand 12, S100 calcium binding protein A8, atypical chemokine receptor 1, chemokine (C-X-C motif) ligand 2, IL10, NOS2 など炎症反応に関連する蛋白を含め100種類以上の蛋白が同定された。得られた蛋白に関し遺伝子ネットワーク/パスウェイ解析データベースを用いてそれらの蛋白のネットワーク、機能解析や相互作用の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、確立されたラットの肝臓移植モデルを用いて、移植後の免疫応答の病理免疫学的特徴の解析を進め、移植肝臓内でみられている免疫寛容の獲得過程に特異的な免疫応答を明らかにし、急性および慢性のT細胞性拒絶反応や抗体関連型拒絶反応と比較検討する。また、末梢血や移植臓器内での免疫応答の評価が可能なバイオマーカーの同定を進めることを目的にしている。ラット肝臓移植動物の作成は順調に進められており、解析のための検体採取が順調に行われている。それぞれ、DA-Lewラット間肝臓移植による急性T細胞性および抗体型関連拒絶反応におけるmicroRNAの変化を観察しバイオマーカー探索への応用を行っている。その結果を踏まえDA-PVGラット間肝臓移植による免疫寛容の獲得に関連する移植肝臓内のmiRNAの検討を進めている。また、DA-Lewラット間肝臓移植の拒絶反応およびDA-PVGラット間肝臓移植による免疫寛容の獲得に関連する蛋白について遺伝子発現の変化をアレイを用いて網羅的な解析を進めている。手術も安定して行われ、解析のための検体採取も順調で、おおむね順調に解析が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
免疫抑制薬を使用せずに免疫寛容の獲得が可能なモデルを用いて解析を行うため、自然でより確実な免疫寛容獲得プロセスの解析が可能になる。現在までに進めたDA-Lewラット間の拒絶反応により臓器廃絶に陥る過程でのmicroRNAの結果と、現在進めているDA-PVGラット間での移植肝臓の免疫寛容獲得過程でのmicroRNAを比較検討し、拒絶反応に特異的なmicroRNAと免疫寛容に関連するmicroRNAを同定する。それらのmicroRNAが拒絶反応、もしくは免疫寛容の過程のバイオマーカーになりうるかを確認する。microRNAに加えてDA-Lewラット間の肝臓移植にみられる拒絶反応とDA-PVGラット間の肝臓移植で進展する免疫寛容の獲得に関連している蛋白について、アレイを用いて遺伝子発現の網羅的な解析を進め、そこで同定された免疫寛容の獲得に関連する候補蛋白について、Real-Time PCRやWestern blotを用いて明らかにする。それらの蛋白を応用して、免疫寛容による新しい治療戦略の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に進めているmicroRNAやアレイを用いた遺伝子発現の変化の網羅的な解析も、開始しているが十分な数の解析には至っておらず、次年度も引き続き行う必要がある。今年度は研究結果がまだ十分にはそろっておらず、その解析のためのコンピュータ、論文の英文校正、投稿費や印刷代を含め、研究成果の発表のための予算を使用していない。次年度に進める microRNAや遺伝子発現の変化の網羅的な解析の消耗品費、研究結果の解析のためのコンピュータ、論文の英文校正、投稿費や印刷代を含め、研究成果の発表のために使用する予算を次年度に持ち越して研究を継続する。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究は、ラットの肝臓移植モデルを用いて、肝臓移植における免疫寛容の獲得の機序や免疫応答の特異性を明らかにすることを目的にしている。次年度は拒絶反応および免疫寛容を獲得した移植肝臓の、病理組織学的検討、免疫組織化学的検討、western blot、real-time PCRを用いて検討を進める。免疫寛容メカニズムの検討のために、遺伝子発現の変化やmicroRNAの変化の網羅的な解析を予定している。次年度の研究費は主にアレイを用いた遺伝子発現やmicroRNA の解析のための消耗品に使用する。移植肝臓の病理組織学的検討、免疫組織化学的検討、western blot、real-time PCRのための消耗品の購入も行う。研究のための情報収集、研究会や学会の参加やそのための旅費にも使用する。また結果の解析のためのコンピュータも購入の予定。論文の作成には英文校正、投稿費や印刷代を含め、研究成果の発表のために使用する。
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