研究課題
本研究は、ラットの肝臓移植モデルを用いて、肝臓移植における免疫寛容の獲得の機序や免疫応答の特異性を明らかにすることを目的に研究を進めている。今年度は、DAラットからPVGラットへの移植後長期間移植肝臓が生着するモデルを用いて、コントロールとしての急性抗体関連型およびT細胞型拒絶反応により11日程度で臓器廃絶に陥るDAラットからLewラットへのモデルの移植肝臓と比較し、移植後長期間生着する移植肝臓の免疫病理学的な特徴を検討した。PVGラットに移植されたDAラットの移植肝臓内でも、移植後7日目には門脈の血管内膜炎や細胆管炎を伴う急性T細胞性拒絶反応に類似した炎症細胞浸潤を認めた。しかし、移植後21日目にはわずかな炎症細胞を残して炎症細胞浸潤は消退、急性T細胞性拒絶反応の病理所見も減弱し、移植肝臓は100日以上の長期生着を認めた。移植後11日目に臓器廃絶に陥るDA-Lewラット間の移植肝臓に比較し、PVG-DAラット間の移植肝で認められる炎症細胞は、ともにT細胞性急性拒絶反応の病理所見を呈しているが、CD3陽性T細胞とED-1陽性マクロファージが少なく、T細胞のPCNA陽性の増生がわずかで、門脈や細胆管、肝小葉内のT細胞性拒絶反応の病理所見も軽度であった。また、移植肝臓内のIL-12, IFN-γ, TNF-αのTh1サイトカインの産生が少なく、IL-4やIL-10のTh2サイトカインの産生増強が認められた。さらに、拒絶反応に類似しているCD3陽性T細胞やED1陽性マクロファージの炎症細胞内に多くのFoxp3陽性のTregが認められた。免疫寛容が進展している移植肝臓内では、一過性の炎症細胞浸潤が認められるが、進行性に減少する炎症細胞浸潤、移植臓器内の Th2サイトカイン環境、多く浸潤しているTregが免疫寛容の誘導に関連していると考えられた。
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Am J Transplant
巻: 17 ページ: 91-102
10.1111/ajt.13952.
巻: 16 ページ: 317-324
10.1111/ajt.13424.