研究課題/領域番号 |
26461940
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
榊原 雅裕 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70375632)
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研究分担者 |
三階 貴史 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00375685)
長嶋 健 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (60292710)
藤本 浩司 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60456027)
宮崎 勝 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70166156)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞外マトリックス / 化学療法抵抗性 / ニッチ / テネイシンC |
研究実績の概要 |
本研究は、複数の細胞外マトリックスによる乳癌の治療抵抗性の形成を解明することを目的としている。我々は以下の9種類の細胞外マトリックスをその候補(基底膜を構成する4因子:Ⅳ型コラーゲン、ラミニン、パールカン、ナイトジェンとそれ以外の5因子:フィブロネクチン、ヒアルロン酸、Ⅰ型コラーゲン、Ⅱ型コラーゲン、テネイシンC)とし、乳癌の治療抵抗性へのその複合的なニッチとしての関与を検討する。2014年度には、基底膜に関与しない細胞外マトリックス5因子から我々が特に注目していたテネイシンCとフィブロネクチンの癌幹細胞(ALDH1陽性細胞)と抗癌剤抵抗性(術前化学療法抵抗性)への関与を乳癌患者の臨床検体を用いて免疫染色で検証した。テネイシンC陽性の乳癌患者では陰性の患者に比して有意に化学療法抵抗が高いことが解った。さらに興味深いことにそのことはALDH1陽性細胞を含有する乳癌患者で顕著であった。一方、フィブロネクチン単独陽性の患者には同様のことは認められなかったが、テネイシンCとフィブロネクチンの共陽性の患者では、化学療法抵抗性への関与が増強する結果となった。この結果は複数の細胞外マトリックスがニッチとして化学療法抵抗性に相乗効果を持つことを示唆しており、我々の仮説(複数の細胞外マトリックスが乳癌の治療抵抗性の多様性を形成する)の一部分を証明したことになった。テネイシンCの乳癌の治療抵抗性への関与は予想以上に大きく、これを中心として他の細胞外マトリックスとの相乗効果を免疫染色で観察する手法が有望であると感じられた。今後他の実験系と平行して免疫染色による治療抵抗性の解析の系を強化する方針とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014-5年度の研究により本研究の前提となる仮説(複数の細胞外マトリックスが乳癌の治療抵抗性の多様性を形成する)が証明された。特に患者検体を用いた系で示されたことから、本研究による成果の現実性が高まった。研究経過は順調であると考えられる
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今後の研究の推進方策 |
患者検体を用いた免疫染色法により、テネイシンCとALDH1陽性細胞(乳癌幹細胞)の予想以上の強い関係が明確になった。さらにフィブロネクチンとの共陽性による相乗効果も確認できた。免疫染色法は臨床治療に直結しているため、この手法を用いた解析を基本とすることが有効であると判断し、他の解析とともにこの解析法を拡大する予定である。
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