研究課題
我々はこれまでに高度侵襲手術の一つである膵頭十二指腸切除術に対する免疫栄養療法(immunonutrition)の有効性を二つのランダム化比較試験にて検討し、それぞれ術前術後免疫栄養療法、術前免疫栄養療法の有効性を実証し、国内外の学会において報告してきた。本研究は、膵頭十二指腸切除術などの高度侵襲手術において、はたして免疫栄養療法の術前から術後への継続投与が更なる上乗せ効果を有するかを検証するものである。この結果により、高度侵襲手術における免疫栄養療法のベストプラクティスが確立し、医療の発展に貢献できるものと考えている。本研究のプロトコルは、60名の膵頭十二指腸切除術予定の患者を対象とし無作為に2群に振り分けて比較検討する。まず術前のみ免疫強化栄養剤を摂取し、術後は通常経腸栄養剤管理とする「術前群」と、術前は同様に免疫強化栄養剤を摂取し、術後も免疫強化栄養剤の経腸栄養管理とする「術前後群」の2群とし、既に60名の患者のエントリーは終了した。検討の結果、術前後群と術前群では感染性合併症の発症率に差はなく、細胞性免疫の指標であるConA/PHA刺激リンパ球幼弱化能や血漿IL-6にも差を認めず、免疫栄養療法の術前から術後への継続投与の上乗せ効果は認めなかった。よって高度侵襲手術に対する免疫栄養療法は術前投与が推奨されると考えられた。本研究の一部は、第36回欧州静脈経腸栄養学会(ESPEN)、第32回日本静脈経腸栄養学会(シンポジウム)、日本外科代謝栄養学会第53回学術集会(シンポジウム)等で報告した。
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