研究課題
乳癌は、内分泌療法に対して不応な症例や治療初期には奏効するものの経過とともに耐性を獲得して再発する症例があり、臨床上大きな問題となっている。申請者らは、これまでに同定した乳癌特異的分子BIG3によるPHB2のERα活性化抑制機能の制御が、エストロゲン (E2) 依存性乳癌の細胞増殖に必須であること、さらにBIG3-PHB2の結合阻害ペプチド(ERAP)を開発し、E2依存性乳癌に対する抗腫瘍効果を明らかにした。そこで、このERAPによる内分泌療法に対して耐性を獲得した乳癌細胞への抑制効果を検討した。その結果、ERAPは耐性獲得の原因と考えられるE2と増殖因子のクロストーク・シグナル、アロマターゼ阻害剤に対する耐性細胞株、およびESR1体細胞変異に対しても細胞増殖をはじめ顕著な抑制効果を有していた。さらに、ERAPは既存の抗ホルモン剤(タモキシフェン、フルベストラント)や分子標的薬(mTOR阻害剤エムロリブス)との併用投与により相乗的な抑制効果を獲得し、閉経前後を問わない乳癌患者の有効な治療薬になる可能性が示唆された。また、BIG3の機能解析を進めたところ、PKAとPP1Cαと複合体を形成してE2依存性のBIG3リン酸化を介してホスファターゼ活性を惹起することを明らかにし、PHB2の抑制活性(Ser39のリン酸化)を制御していることを示した。乳癌の臨床検体でもBIG3の強発現とPHB2のリン酸化が逆相関関係を有していることを見出した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Scientific Reports
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