研究分担者 |
岡野 慎士 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10380429) [辞退]
北尾 洋之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30368617)
山下 奈真 九州大学, 大学病院, その他 (60608967)
佐伯 浩司 九州大学, 大学病院, 講師 (80325448)
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研究実績の概要 |
原発性浸潤性乳癌363例において、主要な癌抑制遺伝子BRCA1, BRCA2, TP53, RB1, PTEN , INPP4B の遺伝子座のヘテロ接合性の欠失(Loss of heterozygosity ;LOH)を自動シークエンサーによるフラグメント解析で評価した。また、全ゲノムの染色体不安定性をSNP-CGHで評価した。 LOHの有無について評価可能であった症例での癌抑制遺伝子座のLOHの頻度は、BRCA1 113/302 (37.4%), BRCA2 96/282 (34.0%), TP53 159/278 (57.1%), RB1112/267 (41.9%), PTEN 76/295 (25.8%),INPP4B 43/239 (18.0%)だった。LOHの頻度はホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性群で最も低く、HER2 陽性、triple negative (TN)群で著明に高かった。これらの癌抑制遺伝子座にLOHを認める症例では、核グレードが高く、ER陰性、PR陰性である症例が有意に多かった。INPP4B遺伝子座のLOHはTNサブタイプと有意に相関していた。また、これらの癌抑制遺伝子座のLOHと予後との関連はサブタイプによって異なっていた。特にBRCA1とTP53遺伝子座の両方にLOHを認める症例では、特に悪性度が高く、染色体不安定性が高度で、予後も不良であった。サブタイプ別では、HR陽性/HER2陰性サブタイプではBRCA1,TP53, INPP4B遺伝子座にLOHを認める症例では有意に予後不良であったが、ほかのサブタイプでは各遺伝子座のLOHの有無と予後に有意な相関は認められなかった。このことから、染色体不安定性を示すHR陽性/HER2陰性乳癌においては、ホルモン療法の効果が低い(ホルモン耐性)可能性が示された。また、TNサブタイプの多くは高度の染色体不安定性を示したが、非常に予後不良であったTN症例の中に染色体異常をほとんど示さないものがあり、claudin lowタイプとの関連が示唆された。
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