研究課題/領域番号 |
26461949
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
徳永 えり子 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (50325453)
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研究分担者 |
岡野 慎士 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10380429) [辞退]
北尾 洋之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30368617)
山下 奈真 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60608967)
佐伯 浩司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80325448)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳癌 / 遺伝子変異 / 染色体不安定性 / APOBEC3B / ER陽性乳癌 |
研究実績の概要 |
前年度は、様々ながん抑制遺伝子座のヘテロ接合性の欠失(Loss of heterozygosity ;LOH)の頻度を解析し、染色体不安定性と内分泌療法不安定性との関連を示した。 平成27年度は、がんにおいて遺伝子変異を起こす重要な要因として知られるようになった、シチジンデアミナーゼであるAPOBEC (apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like)3B mRNAの発現と、臨床病理学的因子との関連を解析した。 305例の浸潤性乳癌において、APOBEC3B mRNAの発現を定量的RT-PCRにて解析した。28例ではAPOBEC3B mRNAの発現は全く検出されなかった。APOBEC3B mRNA高発現群ではER陰性、PgR陰性、高グレード、高Ki67の症例が多く、APOBEC3B mRNA高発現は悪性度が高いことと関連していると考えられた。サブタイプ別ではトリプルネガティブ乳癌でAPOBEC3B mRNA発現が高く、ホルモン受容体陽性/HER2陰性サブタイプで最も低かった。APOBEC3B mRNA高発現群では、低発現および無発現群に比較してTP53遺伝子変異の頻度が有意に高かった。APOBEC3B mRNA高発現群は低発現群に比較して有意に予後不良であり、特にER陽性症例で顕著であった。APOBEC3B mRNA高発現であることにより、様々な遺伝子に変異が蓄積し、治療抵抗性になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原発性浸潤性乳癌における染色体不安定性について、遺伝子変異を起こす重要な要因として知られるようになったAPOBEC3B mRNAの発現解析を行った。その結果、APOBEC3B mRNA高発現により、TP53に高頻度に遺伝子変異が怒っていることがわかった。また、APOBEC3B mRNA高発現症例では予後が不良であり、様々な遺伝子に変異が蓄積し、治療抵抗性になることが示唆された。特にER陽性乳癌において予後への影響が高く、内分泌療法抵抗性との関連が示唆された。300例を超える症例での解析は、国内でも他に例がなく、非常に貴重なデータであると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
相同組換修復正確性の高いDNA修復経路に異常がある場合、非相同末端結合(NHEJ)による誤りがちな(error-prone)DNA修復経路がその代替として使われることが知られている。最近、「誤りがちな」ポリメラーゼPolθをコードする哺乳類のPOLQ遺伝子が、非相同末端結合(NHEJ)に関与していること、悪性度の高いがんでPolθの発現が高いことが示されている。 これまで、乳癌における染色体不安定性と臨床病理学的な因子との関連について、さまざまな癌抑制遺伝子の遺伝子座のLOHやAPOBEC3B発現を解析してきた。今後さらにPolθ発現についても解析し、染色体不安定性、遺伝子変異、治療効果との関連についても解析する。
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