背景と目的;学技術を活用し、甲状腺を再構築させる方法の確立と、機能についての基礎的検討を行うことを目的とするもの。様々な原因で甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモン剤内服治療が行われている日本人は50万人を超える。福島原発事故の際、内服薬供給が断たれ問題となった。温度応答性培養皿を用いた各種細胞シートは、細胞の扱いやすさや機能の保持という利点を有し、食道早期癌や角膜障害等に対して、臨床応用も行われている。本研究では、将来の甲状腺機能低下症に対する新たな治療法の確立へ向けた、細胞シート工学の応用を行う。 方法;患者より同意の得られた甲状腺手術摘出標本を用いて検討する。甲状腺組織より甲状腺細胞を分離し、細胞シート用培養皿(温度応答性培養皿)で培養する。分離方法、培養方法、培養液、添加物などにつき各々検討を加え、ヒト甲状腺細胞シートの安定した作成、回収方法を確立する。同時にヒト甲状腺培養細胞シートの甲状腺組織としての機能および形態学的評価として、細胞シートの上澄み液中の甲状腺ホルモン値の測定、免疫染色、PCRなどによる検討を行う。 結果; ・新鮮甲状腺細胞を温度応答性培養皿上で培養を行った。これら細胞は、1)甲状腺特異的マーカー(サイログロブリン、TTF-1)発現、2)培養液中への甲状腺ホルモン産生、を1週間認め、3)細胞シート形成が可能であった。 ・線維芽細胞や脂肪由来幹細胞との複合細胞シートでは、機能の上昇は見られなかった。
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