研究課題/領域番号 |
26461953
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮成 信友 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (90336230)
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研究分担者 |
馬場 祥史 熊本大学, 生命科学研究部, 講師 (20599708)
志垣 博信 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 医員 (30594874)
渡邊 雅之 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 食道担当部長 (80254639)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 5-hmC / 脱メチル化 / TET酵素 / 食道癌 |
研究実績の概要 |
癌細胞におけるDNAの脱メチル化機構に関わると考えられているTET酵素および5-hmCの消化器癌における発現の意義を検討することが当研究の目的である。食道扁平上皮癌切除症例のうち、当施設の凍結切片77例と共同研究施設である九州がんセンターの凍結切片29例からDNAを抽出した。5-hmCの定量化の方法として、genome DNAを用いたELISA 法がある。今回我々は、Quest 5-hmC(TM) DNA ELISA Kit (Zymo Research, Irvine, CA, USA)を用いて5-hmC定量を行った。33症例における癌部と非癌部の5-hmCを定量したところ、癌部%5-hmCはmedian: 0.046; mean: 0.070; standard deviation [SD]: 0.07であった。一方、非癌部の%5-hmCはmedian: 0.141; mean: 0.146; SD: 0.07だった。よってELISA法において、癌部の5-hmcレベルは非癌部よりも有意に低いことが判明した(P < 0.0001 by paired t-test)。 また、5-hmCの定量化のため、免疫染色による評価もおこなった。食道扁平上皮癌切除症例10例のパラフィン切片を用いて5-hmC抗体(Active Motif, Carlsbad, CA, USA)で染色を行ったところ、いずれの症例も周辺正常上皮と比較して癌部の5-hmCは減少していることがわかった。食道癌は非常に予後の悪い疾患であるが、今回の結果は食道癌における新たなバイオマーカーとして有用な可能性があり、非常に臨床的意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記した予定通りに研究は遂行され、意義深い結果が得られている。さらに今後も予定通り研究を推進することで、癌細胞における脱メチル化と生物学的悪性度との関係が明らかとなる可能性がある。このことは、食道癌における新たなバイオマーカーの発見を意味している。
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今後の研究の推進方策 |
DNAを抽出した症例と同一症例の凍結切片からISOGEN II(ニッポンジーン)を用いてtotal RNAを抽出する。その後、RT-PCR法でcDNAを作成し、Real-time PCR法でmRNAレベルのTET酵素(TET1,TET2,TET3)の発現を定量的に測定する。5-hmCとTET酵素の発現レベルの相関関係を検証する。また、凍結切片から抽出したDNAをバイサルファイト処理したのち、Pyrosequencingを行う。Pyrosequencing technologyは、遺伝子変異解析やメチル化解析において非常にすぐれたtoolである。この方法を用いて解析された食道癌LINE-1メチル化レベルは、食道癌の予後予測因子となりうることが報告されているため、LINE-1メチル化レベルと5-hmCやTET酵素の発現と相関関係を検証することで、癌細胞におけるメチル化と脱メチル化のバランスが予後といかに関係しているかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬消耗品に関し、医局内保管のものをしようできたため。
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次年度使用額の使用計画 |
DNA抽出およびReal Time PCR等に係る試薬消耗品費購入に充てる。また、外部にいる研究分担者との連絡をスムーズに行うため、データ管理棟にかかる事務補助員の人件費にしようしたいと考える。
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