研究課題
食道癌細胞におけるDNAの脱メチル化機構に関わると考えられているTET酵素および5-hmCの消化器癌における発現の意義を検討することが当研究の目的である。前年度はDNAの抽出および5-hmCの定量を行ったが、当年度においてはまず食道扁平上皮癌切除症例のうち、当施設の凍結切片77例と共同研究施設である九州がんセンターの凍結切片29例からRNAを抽出した。そしてTET酵素群の発現をqRT-PCRを用いて定量し癌部と非癌部で比較したところ、TET1の癌部はmedian: 0.019; mean: 0.022; SD: 0.02、非癌部はmedian: 0.015; mean: 0.018; SD: 0.01で、両者を比較すると P = 0.23とほぼ同等であった。TET2の癌部はmedian: 0.045; mean: 0.053; SD: 0.03、非癌部はmedian: 0.087; mean: 0.090; SD: 0.03で、比較すると P < 0.0001と癌部が有意に低値であった。また、5-hmCとTET酵素群の発現量の相関関係について解析した結果、TET1とTET3はそれぞれP = 0.306、P = 0.927で有意な相関関係は認めなかった。一方、TET2はP = 0.003で有意な相関関係を認めた。よって5-hmCとTET2の減少は食道癌の癌化において重要な役割を担っていると考えられ、これらの結果はOncotargetという癌研究分野の一流誌に既に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
計画書に記した予定通りに研究は遂行され、意義深い結果が得られている。これらの結果は、Oncotargetという癌研究分野の一流誌に既に採択されている。
今後は、食道癌5-hmCレベルおよびTET酵素群が抗癌剤感受性の関連について研究を進めていく予定である。また、食道癌細胞株を用いたin vitroの研究も開始する予定であり、準備を行っている。食道癌細胞株の5-hmC 、TET酵素群の値を測定し、in vitroでの癌細胞浸潤能、増殖能、細胞サイクル、Docetaxel感受性などとの関係を評価する。
医局内保管の消耗品を使用することが出来たため。
今後は、食道癌5-hmCレベルおよびTET酵素群が抗癌剤感受性の関連について研究を進めていく予定である。また、食道癌細胞株を用いたin vitroの研究も開始する予定であり、今年度以上の実験消耗品を要する予定である。次年度はそれらの購入費に研究費を充てたいと考える。また、データ管理、資料作成を補佐する事務補佐員の人件費としても使用したいと考える。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Oncotarget
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