研究課題/領域番号 |
26461954
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
菅沼 伸康 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40724927)
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研究分担者 |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がん分子病態学部, 部長 (00254194)
山中 歩 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (00728339)
益田 宗孝 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10190365)
益戸 功彦 横浜市立大学, 市民総合医療センター, 助教 (10404972)
利野 靖 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (50254206)
吉田 明 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 乳腺内分泌外科, 部長 (70182748) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 甲状腺未分化癌 / ヒストン修飾 / 効果予測因子 |
研究実績の概要 |
細胞の発癌過程や,その後の更なる悪性形質(浸潤能,転移能)の獲得過程には様々な遺伝子変化の蓄積が関与していることがしられており、甲状腺未分化癌でも多くの遺伝子異常が指摘されている。既報告では、いずれも単独で予後予測因子となりえたものはなく、治療標的としても確立されていない。こうした中、近年遺伝子の構造自体には変化を伴わない、いわゆるエピジェネティックな変化も、発現や悪性形質の獲得過程に深く関わることが解ってきている。エピジェネティックスによる発現調節機構には、DNA のメチル化やmicroRNA とともにクロマチン構造のリモデリングを介して遺伝子発現のon/off や発現強度の調節に関与するヒストン蛋白のメチル化、アセチル化による修飾(histone modification)が知られており、多くの癌種においてその変化が報告されているとともに、それらの修飾に関与するJARID、EZH、MLL 等のヒストン修飾酵素の発現と悪性度、予後との関連についても多数報告されている。しかし、甲状腺未分化癌におけるこれらのデータは依然として不足している。我々のPreliminary data では、H3K27 のメチル化酵素でその領域の遺伝子転写を抑制するたんぱく質複合体であるEZH2 の発現は未分化癌でかつ予後が極めて不良な群に高度に発現する傾向にあった(Figure2)が、多数例での解析を要すると考えている。未分化癌に特徴的なヒストン修飾やその修飾遺伝子の変化を明らかにし、予後予測ならびに治療標的を確立することを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は甲状腺未分化癌におけるヒストンの主だったメチル化・アセチル化について検討、その結果H3K4me, H3K9me, H3K9ac, H3K27me, H3K36me については正常組織と腫瘍組織の間に一定の傾向は得られなかった。脱メチル化酵素としてEZH2, MLL2, JARID1A, JARID1Bを選択してその発現と悪性度・予後について検討した。陽性率はそれぞれ40/46(87.0%)、1/46(2.2%)、4/46(8.7%)、19/46(41.3%)でMLL2, JARID1A, JARID1Bに関しては一定の傾向が認められなかったが、EZH2はStageが上昇すると陽性率が高くなり高発現群では低発現群に比べて予後が悪い傾向にあった(p=0.158)。また、未分化癌組織で高発現しているものも正常濾胞細胞や同一組織内の乳頭癌細胞には発現が見られないという特徴が認められた。この結果をもとに、平成27年度は、EZH2をターゲットとして従来ある予後因子を含め、EZH2の予後因子としての有用性について検討した。年令、性別、腫瘍径、リンパ節転移、遠隔転移にEZH2を加えて解析したところ、単変量・多変量解析ともに腫瘍径と遠隔転移は、自験例でも従来の報告にあるように予後因子となったが、EZH2は予後因子とはならなかった(p=0.185)。次に平成26年度の結果より、ほとんどの未分化癌ではEZH2が高発現していたのに対して、正常濾胞細胞や未分化癌に付随した分化癌では発現がみられなかったことから、EZH2の発現は甲状腺癌の悪性度と関連していることが予想され、これについて検討した。分化癌と未分化癌の中間の悪性度を持つ甲状腺低分化癌をターゲットとして、EZH2の発現並びに予後因子としての有用性を解析したところ、EZH2の陽性率は17.9%で分化癌(0%)と未分化癌(87.5%)の中間の値となった。また、遠隔転移とEZH2の発現は単変量・多変量ともに有意な予後因子となった(Univariate; p=0.011, Multivariate; p=0,048)。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度での成果データを元に従来から予後因子として報告のある各因子とEZH2との相関や関連性を検討していくとともに、同データをまとめて論文化してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加・発表を予定していた研究会に参加できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該研究において使用する実験用消耗品を購入予定。
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