研究課題/領域番号 |
26461959
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327543)
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研究分担者 |
神野 浩光 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20216261)
高橋 麻衣子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50348661)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳癌 / HOXB9 / ベバシズマブ |
研究実績の概要 |
乳癌における分子標的療法はHER2をはじめとして効果予測因子が確立され、日常臨床で頻用されているが、ベバシズマブには実用化されたマーカーを認めない。我々は転写因子HOXB9が腫瘍血管新生を強力に誘導し増大に寄与することを示したが、乳癌・大腸癌等の固形癌細胞への導入では、増大速度が速く、血管新生阻害薬に対して感受性が高い腫瘍が形成された。この検討から、癌微小環境における間質と癌細胞の相互作用による、細胞増殖のためのポジティブフィードバックが存在し、ベバシズマブはこれを効率的に遮断することで、劇的な腫瘍縮小効果を発現するという新しい作用機序を仮説とした。この相関に深く関わる因子としてIL-6を同定し、検証中である。これまでに、癌細胞のみの単培養および間質細胞との共培養の両環境で、HOXB9発現によりVEGFおよびIL-6の培養上清における発現をELISAにて検証したところ、共培養の環境下において、IL-6の有意な上昇を認めた。これに対して、ベバシズマブを添加することで、IL-6の発現は抑制されたため、ベバシズマブは癌細胞から放出されるVEGFの働きを抑制することで、間質と癌細胞の相互作用を遮断すると考えられた。今後はIL-6受容体の活性化抑制と、その下流であるJAK-STAT経路の活性化が抑制され、癌細胞の増殖にどのような影響を与えるかを検証していく。また、これまでに蓄積した患者検体を用いた臨床的な検討も同時に施行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、癌細胞のみの単培養および間質細胞との共培養の両環境で、HOXB9発現によりVEGFおよびIL-6の培養上清における発現をELISAにて検証したところ、これらの有意な上昇を認めた。また、ベバシズマブの添加により、これは抑制されたため、我々の仮説を支持すると考えられる。また、このIL-6は腫瘍細胞へ正のフィードバック効果として、IL-6受容体を活性化させ、JAK-STAT経路の活性化により、腫瘍細胞の増殖を行っていることが見出された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ベバシズマブの添加により、腫瘍細胞におけるIL-6受容体の活性化およびその下流にあるJAK-STAT経路の活性化が抑制されるか否かを検証していく。また、臨床データとして、既に進行再発乳癌に対してベバシズマブを用いた患者データを抽出しており、これら患者の腫瘍細胞におけるHOXB9, IL-6やその標的分子の発現と、ベバシズマブの奏効に相関関係があるか否かを検討する予定である。
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