研究実績の概要 |
乳癌における分子標的療法はHER2をはじめとして効果予測因子が確立され、日常臨床で頻用されているが、ベバシズマブには実用化されたマーカーを認めない。我々は転写因子HOXB9が腫瘍血管新生を強力に誘導し増大に寄与することを示したが、乳癌・大腸癌等の固形癌細胞への導入では、増大速度が速く、血管新生阻害薬に対して感受性が高い腫瘍が形成された。この検討から、癌微小環境における間質と癌細胞の相互作用による、細胞増殖のためのポジティブフィードバックが存在し、ベバシズマブはこれを効率的に遮断することで、劇的な腫瘍縮小効果を発現するという新しい作用機序を仮説とした。既に網羅的解析からこの相関に深く関わる因子としてIL-6を同定し、本課題ではこれら因子の基礎的・臨床的検討から、効果予測因子としての有用性を示し実用化を図ることを目的とした。 すでにベバシズマブの投与による著明な腫瘍増殖抑制がIL-6の制御によることを検証し、JAK-STAT経路がこれに深く関わることを証明した。すなわちHOXB9誘導に伴い、培養上清中のVEGF濃度上昇が認められ、細胞増殖の亢進が生じたが、IL-6の中和抗体およびJAK-STAT経路の阻害薬を添加することで、効率的に阻害された。さらに、IL-6以外のサイトカインについても検討を行ったところ、bFGF, G-CSF, GM-CSF, IL1-beta, MCSF, TGF-beta, TGF-alphaなどが、腫瘍細胞と間質細胞の間で相互作用を行っている可能性が示された。これらの結果をまとめ、現在は論文作成を行っている。
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