研究課題/領域番号 |
26461963
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
三好 康雄 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50283784)
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研究分担者 |
柳井 亜矢子 兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (00529159)
北島 一宏 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (80448860)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FDG-PET / SUVmax / Ki67 / Geminin / 術前化学療法 |
研究実績の概要 |
1、SUVmax値の予後因子としての意義の検討:387例を対象に、SUVmaxのカットオフ値をROC曲線から3.585とした結果、SUVmax高値群は低値群に比べ、有意に無再発生存期間が不良であった(p=0.0003)。サブタイプ別の検討から、luminalタイプ(エストロゲン受容体+/HER2-)で顕著であり、この群においてはKi67発現割合に関わらず予後と相関することを明らかにした。 2、SUVmax値を規定している因子の同定:臨床病理学的因子との検討から、SUVmax値は腫瘍径、リンパ節転移、核グレード、Ki67と相関を認めた。多変量解析の結果Ki67は有意にSUVmax値と相関したことから、SUVmax値は増殖能の高い腫瘍において高値を示すものと考えられた。そこで増殖能に着目し、S期からM期のマーカーであるGemininの発現割合を免疫組織染色で検討した。43例において評価した結果、Ki67よりGemininの方が強くSUVmax値と相関した。SUVmax値は実際に分裂している細胞を評価している可能性があり、より正確に癌の増殖能の指標となるものと考えられた。 3、術前化学療法の治療効果におけるSUVmax値の意義の検討:術前化学療法を行う浸潤性乳管癌30例を対象に治療開始前、治療開始後にFDG-PET検査を行い、SUVmax値が化学療法の感受性予測に有用かどうかを検討する。22例では手術が終了し、臨床効果、病理効果が評価可能であった。その結果、治療開始前、治療開始後のSUVmax値には有意な相関は認められなかった。しかし、治療開始前、後のSUVmax値の比は、cCR群は、Non-cCR群より有意に低値を示した(p=0.018)。病理効果との検討では、治療開始前のSUVmaxはpCR群においてNon-pCR群に比べ有意に低かった(p=0.025)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1つ目の目的であった、SUVmax値の臨床的意義の解明に関し、387例を対象とした解析から、SUVmaxが予後因子として有用であることを明らかにした。さらに、サブタイプ別の検討から、luminalタイプ(エストロゲン受容体+/HER2-)で顕著であり、この群においてはKi67発現割合に関わらず予後と相関することを明らかにした。この点は今まで報告がなく、現在論文投稿中である。 2つ目の目的は、SUVmaxの化学療法の感受性予測因子としての意義を明らかにする点である。これに関しては、22例で解析を行い、治療開始前、後のSUVmax値の比が臨床効果と相関し、治療開始前のSUVmaxが病理効果と相関する結果を得た。今後症例数を増やして解析することで、この結果を確認する予定である。 3つ目の目的は、SUVmax値を規定するメカニズムを解明することである。この点に関しては、Ki67, p53, pMAPK, pS6, Gemininの免疫組織染色を実施している。次年度これらの標本を評価し、さらに症例を追加して検討を行う予定である。免疫組織染色はすでに条件検討を終了しており、次年度に結果を出すことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はさらに術前化学療法を行う40例を対象に、術前化学療法の前、化学療法後1~2サイクル後にFDG-PETを行い、それぞれのSUVmax値、ならびにSUVmaxの変化値と臨床的、病理学的治療効果との相関を検討し、SUVmax値と術前化学療法の治療効果との相関を検討する。 さらに、今年度に行った免疫組織染色による検討(Ki67, p53, pMAPK, pS6, Geminin)に関して、治療開始前、治療後の組織において、発現の変化を免疫組織染色によって評価する。また、SUVmax値はglucose transporterの活性に影響を受けると予想されることから、GLUT1(glucose transporter 1)の発現を免疫組織染色によって検討する。そして、術前化学療法によってSUVmaxが低下することが治療効果の指標となるかどうか、さらにそのメカニズムを明らかにする予定である。 なお、近年血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)が注目されている。ctDNAは比較的早期の乳癌においても検出されている。しかし、ctDNAが検出される乳癌と、検出されない乳癌の違いや、臨床病理学的因子との相関に関しては明らかでない。次年度は術前化学療法を行う症例に関して血漿中のctDNAを評価し、SUVmax値との相関も検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
SUVmax値を規定するメカニズムを解明するために、Ki67, p53, pMAPK, pS6, Gemininの免疫組織染色を実施している。これらの標本を評価しているが症例数が不足したため若干の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降はさらに症例を追加して免疫組織染色を実施し検討を行うことで予定通り遂行可能である。
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