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2016 年度 実施状況報告書

FDG-PETによる術前化学療法の早期治療効果判定法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 26461963
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

三好 康雄  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50283784)

研究分担者 柳井 亜矢子  兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (00529159) [辞退]
北島 一宏  兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (80448860)
樋口 智子  兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (50786407)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード乳癌 / FDG-PET / SUVmax
研究実績の概要

(1)SUVmax値を規定している因子の同定:
SUVmax値を規定しているメカニズムを明らかにするため、手術切除された乳癌の検体163例を対象に、免疫組織染色を行った。グルコースの取り込みを制御するGLUT-1の発現を、膜の染色パターンと強度を組み合わせて評価することでSUVmax値と有意に相関することを明らかにした。また、増殖因子シグナルの活性化の指標としてpS6陽性率、pMAPK陽性率、さらに糖代謝亢進の指標であるTP53の発現を免疫組織染色で検討した結果、pS6、pMAPK、TP53いずれもSUVmax値との強い相関は認めなかった。しかし、pS6陽性率、pMAPK陽性率はGLUT-1の発現と相関したことから、これらの増殖因子がGLUT-1の発現を介してSUVmax値を制御するメカニズムを明らかにした。
(2)術前化学療法の治療効果におけるSUVmax値の意義の検討:
術前化学療法をおこなった125症例を対象に、治療開始前のSUVmax値と病理学的治療効果を検討した。その結果、SUVmax値高値群の病理学的完全奏効率(22.5%)は、低値群(8%)に比べ、高い傾向を認めた(p=0.0771)。そこで、増殖マーカーに着目し、Ki67とS期特異的マーカーであるgemininの発現レベルを免疫組織染色によって評価した。その結果、gemininの方がより強くSUVmax値と相関した(p<0.0001)。このようにSUVmax値は増殖能を反映しており、その結果SUVmax値が化学療法の効果と相関するメカニズムが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の1つ目の目的であった、SUVmax値の臨床的意義の解明に関し、387例を対象とした解析からSUVmaxが予後因子として有用であることを明らかにした。さらに、サブタイプ別の検討から、luminalタイプ(エストロゲン受容体+/HER2-)で顕著であり、この群においてはKi67発現割合に関わらず予後と相関することを明らかにし、論文発表を行った。
2つ目の目的は、SUVmax値を規定しているメカニズムの解明である。今回GLUT-1の発現を新たにスコアー化することで、SUVmax値との相関を示した。そして従来増殖因子経路の活性化がSUVmax値と相関することは示されていたが、本研究結果によってpS6経路、pMAPK経路の活性化はSUVmax値に直接影響するのではなく、GLUT-1を介してSUVmax値を制御していることを明らかにすることができた(論文投稿中)。
3つ目の目的は、ベースラインならびに治療後早期のSUVmax値の低下が化学療法の感受性と相関するメカニズムを明らかにすることである。今回増殖能に着目して検討した結果、S期マーカーであるgemininの発現レベルがSUVmax値と強く相関することを明らかにした。そして治療後の早期のSUVmax値の低下は増殖能の低下を反映する結果、治療効果と相関するメカニズムを示した(論文投稿中)。

今後の研究の推進方策

研究計画において達成できなかった点として、培養細胞においてAkt, MEK阻害薬によるグルコースの取り込みの評価である。しかし、臨床検体による検討から、これらの増殖因子経路は直接SUVmax値を制御しているわけではないことから、計画を変更して、SUVmax値を評価する因子として新たにgemininを評価し、SUVmax値は増殖能を反映していることを明らかにすることができた。来年度に持ち越した研究費は、SUVmax値を外部評価することの解析に使用する予定である。
今後の展開として、術前化学療法を施行した症例において、SUVmax値の早期低下がどの程度治療効果や予後に関与するのか、この点を明らかにしていくことが必要である。またFDG-PETにおいてSUVmax以外にMTV(metabolic tumor volume)、TLG(total lesion glycolysis)も評価し、どの因子が予後あるいは治療効果予測因子として有用かどうかを検討していく予定である。今回の検討により、SUVmax値は増殖因子経路の活性化、乳癌の増殖能を反映していることを明らかにした。一方、SUVmax値は癌細胞そのもののバイオロジーだけではなく、低酸素状況や免疫応答など癌局所の微小環境を反映している可能性が示唆される。今後はこの点に着目し、SUVmax値と低酸素状況、さらに免疫応答との相関を検討していきたい。

次年度使用額が生じた理由

今年度に必要な物品は購入し終えたため。

次年度使用額の使用計画

次年度に必要な物品を購入するため。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Prognostic significance of preoperative <sup>18</sup>F-FDG PET/CT for breast cancer subtypes.2016

    • 著者名/発表者名
      Higuchi T, Nishimukai A, Ozawa H, Fujimoto Y, Yanai A, Miyagawa Y, Murase K, Imamura M, Takatsuka Y, Kitajima K, Fukushima K, Miyoshi Y.
    • 雑誌名

      Breast

      巻: 30 ページ: 5-12

    • DOI

      10.1016/j.breast.2016.08.003

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] エストロゲン受容体陽性・HER2陰性乳癌のFDG-PETにおけるSUVmax値と増殖能との相関2016

    • 著者名/発表者名
      井上 奈都子, 樋口 智子, 西向 有沙, 尾澤 宏美, 柳井 亜矢子, 宮川 義仁, 村瀬 慶子, 今村 美智子, 高塚 雄一, 山野 理子, 三好 康雄.
    • 学会等名
      第24回日本乳癌学会学術総会
    • 発表場所
      東京ビッグサイト(東京)
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-17
  • [学会発表] FDG-PETにおけるSUVmax値のサブタイプ別予後因子としての意義2016

    • 著者名/発表者名
      樋口 智子, 西向 有沙, 尾澤 宏美, 柳井 亜矢子, 宮川 義仁, 村瀬 慶子 ,今村 美智子, 高塚 雄一, 山野 理子, 三好 康雄.
    • 学会等名
      第24回日本乳癌学会学術総会
    • 発表場所
      東京ビッグサイト(東京)
    • 年月日
      2016-06-16 – 2016-06-16

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公開日: 2018-01-16  

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