研究実績の概要 |
1)SUVmax値を規定している因子の同定: 手術切除された乳癌の検体163例を対象に、Geminin、Ki-67、pS6、pMAPK、TP53について免疫組織染色を行った。その結果、増殖マーカーであるgemininと腫瘍径が有意なSUVmax値の規定因子であることを明らかとした。腫瘍サイズが大きく、増殖能の高い腫瘍がSUVmax高値を示すことを明らかとした。また、S6経路の活性化やTP53機能不全の単独でSUVmax値を決定づけるものではなく、これらの因子が複合的に影響しているものと推測された。乳癌の増殖能や腫瘍サイズが増大する過程で、SUVmax値で評価される糖代謝の亢進が関与している可能性が示唆された。これらの結果は、SUVmax値の臨床的意義を理解するために有用である。
2)術前化学療法の治療効果におけるSUVmax値の意義の検討: 乳癌におけるSUVmax値は、化学療法の治療効果と相関する。一方、乳癌局所におけるリンパ球浸潤(TIL)も化学療法の治療効果に影響する。そこで、両者を組み合わせることで正確な治療効果判定が可能かどうか検討した。術前化学療法を施行した167症例を対象に、治療前のSUVmax値と病理学的治療効果(pCR)を検討した。SUVmax高値群のpCRは、低値群より有意に高かった(33.3% vs 14.0%, p=0.015)。SUVmax高値群ではTILとpCRは有意に相関した(高,中,低:69.2%, 29.4%, 17.4%, p<0.0001)が、SUVmax低値群ではTILとpCRは相関しなかった(p=0.30)。SUVmax値が高い群では、TILsとpCR値は有意に相関した。SUVmax値が低い群では、TILsが高値であってもpCRは低かった。TILsとSUVmax値を組み合わせることで、よりpCRの予測能が向上すると考えられた。
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