研究課題/領域番号 |
26461964
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
紅林 淳一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10248255)
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研究分担者 |
森谷 卓也 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00230160)
鹿股 直樹 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (60263373)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳癌 / 癌幹細胞 / エストロゲン / Hedgehogシグナル / Gli1 / GANT61 |
研究実績の概要 |
乳癌の内分泌療法に対する抵抗性の発生は、臨床の場において大きな問題となっている。しかし、内分泌療法抵抗性発生のメカニズムは、不明な点が多い。 我々は、「エストロゲンによる癌幹細胞 (cancer stem cells, CSC)の制御機構の破綻」が、内分泌療法抵抗性発生の一因となっているとの仮説を立てた。まず、エストロゲン高感受性乳癌細胞株及び低抗性乳癌細胞株を用い、エストロゲン添加により発現が亢進する遺伝子及び低下する遺伝子を網羅的にマイクロアレイで解析し、パラクリン機構を介してCSCの制御に関わることが予想される複数の遺伝子を同定した。候補遺伝子として、amphiregulin、betacellulin及びCXCL-12が抽出された。しかし、これら3候補遺伝子は、エストロゲンによる発現の増加や細胞増殖促進効果と相関したが、CSCの制御とは全く相関しなかった。 そこで、「幹細胞制御機構の要となるHedgehogシグナル伝達経路のeffectorであるGli1が、エストロゲン依存性乳癌細胞のエストロゲンによるCSC制御において重要な役割を果たしている」との別グループから報告された研究結果を検証することとした。前述のマイクロアレイを用いた解析やその後行った定量RT-PCRによる検討において、Gli1がエストロゲンによりnon-canonical pathwayを介して発現が促進されることが確認された。また、non-canonical Hedgehogシグナル伝達阻害薬GANT61がエストロゲンによるGli1の発現やCSC増加作用を阻害することが確認された。さらに、乳癌内分泌療法の効果を増強する目的で、GANT61と抗エストロゲン薬との抗腫瘍効果やCSC制御に関する相互作用を検討し、両薬剤の相加効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究仮説である「エストロゲンによる乳癌CSCの制御は、non-CSCから分泌されるパラクライン因子を介して行われる」は、我々が行ったCSCとnon-CSCを分離後に行ったマイクロアレイ解析とその後の検証実験により否定的となった。そこで我々は、速やかに研究仮説を「幹細胞制御機構の要となるHedgehogシグナル伝達経路のeffectorであるGli1が、エストロゲン依存性乳癌細胞のエストロゲンによるCSC制御において重要な役割を果たしている」に変更し、この研究仮説を詳細に検証するとともに、現在、新規抗腫瘍薬として注目されているnon-canonical Hedgehogシグナル伝達阻害薬GANT61を入手し、本薬剤の内分泌療法抵抗性乳癌細胞に対する抗腫瘍効果やCSC制御作用を検討した。その結果、エストロゲン→ERと結合→Gli1 mRNAを増加→Gli1によるSOX2の活性化→CSC比率の増加が検証され、さらに、GANT61によりこの経路が阻害され、CSC比率の増加を阻止することが示された。また、抗エストロゲン薬との併用により相加的な抗腫瘍効果を示すことが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
今後、siRNAを用いたGli1やその他のHedgehogシグナル伝達関連因子発現の阻害などを取り入れ、新たな研究仮説のさらなる検証を予定している。さらに、GANT61の内分泌療法抵抗性乳癌細胞における抗腫瘍効果やCSC制御作用をin vitro, in vivoの実験モデルにおいて検証する予定である。また、乳癌標本を用い、様々なサブタイプの乳癌におけるHedgehogシグナル伝達経路関連因子の発現プロファイルを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように研究仮説を変更せざるを得なくなり、新たな研究対象としてHedgehogシグナル伝達の解析やその阻害薬を用いたCSC制御の研究が加わった。しかし、必要最小限の研究支出により本年度の研究を遂行したため、約7万円(交付決定額の約5%)が翌年に持ち越された。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな研究仮説をさらに検証するため、今後の研究予定に従いHedgehogシグナル伝達を阻害するsiRNAや特異的な伝達阻害薬を用い、エストロゲンによるCSC増加の作用機構を検討する。さらに、in vitro及びin vivoにおいて、これらの阻害薬が内分泌療法高感受性細胞ならびに低感受性細胞の細胞増殖やCSC比率に与える影響を検討する。また、内分泌療法低感受性あるいは抵抗性細胞においてHedgehogシグナル伝達の破綻が内分泌療法抵抗性に寄与しているとすれば、内分泌療法薬とHH阻害薬の併用により、相乗的な抗腫瘍効果やCSC比率の低下効果がみられることを検証する。さらに、原発乳癌標本を用い、免疫組織化学的手法により、Hedgehogシグナル伝達に関連する蛋白質の発現を半定量的に検討する。これらの研究を実施するため、当初の予算通りに研究費を残りの年度で使用する予定である。
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