研究課題
当研究の目標は,漿膜浸潤陽性(T3)胃癌で根治手術後の患者に対する術後補助化学療法としての,フッ化ピリミジン単独に対する Paclitaxel→フッ化ピリミジン逐次併用の生存期間に関する効果を検証する多施設共同大規模臨床試験における臨床検体を用いて,mRNA を抽出し,cDNA マイクロアレイにより約 2万遺伝子の発現を網羅的に解析し,予後因子や抗癌剤の効果を規定するバイオマーカーの検索を行うことで,個別化療法の可能性を策定することが目的である.具体的には,胃癌における遺伝子群発現の genetic subtype や予後因子の策定や,TS-1 やPaclitaxelの効果規定因子などのバイオマーカーを明らかにすることである.平成26年度の研究実績は,標本の収集であった.この作業は,本研究で最も重要なのは過程であると同時に,律速因子ともなる.Stomach Cancer Adjuvant Multi-Institutional Trial (SAMIT) 付随研究としてのプロトコール作成と倫理審査を経て本臨床試験に参加いただいた全国 232 各施設での倫理審査終了後,1538 例の症例の簿切切片を収集する必要がある.本試験は世界で最も大規模な胃癌術後補助化学療法に関する臨床試験であるためこれらの作業に非常に多くの時間を要したが,病理組織検体を取り扱う上での非常に重要な過程と考えられる.現在組織を収集すると同時に収集された組織からmRNAの抽出作業が行われている.
2: おおむね順調に進展している
概要でも述べたが,本研究は臨床検体を扱う研究であり,また参加施設が多施設であり,臨床研究に関する倫理指針に沿って適切で慎重な取扱が必要である.そのため,プロトコール作成,倫理審査の承認など多施設で行われるにはある程度の時間を要す作業である.しかしながら,臨床検体は収集されつつあり,同時にmRNAの抽出に取りかかっているため達成度はやや遅れているものの概ね計画通りと判断した.
これまで通り,倫理指針に沿って適切に臨床検体を収集し,mRNAの抽出を行い,マイクロアレーによる網羅的解析に進む方針である.
検体収集の過程が予定の半年からやや遅滞しておりmRNA抽出が全て終了しておらず,次年度使用額が生じた.
27年度も引き続きmRNA抽出を行うため予定通り予算が必要である.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Lancet Oncology
巻: 15 ページ: 886-893
http://dx.doi.org/10.1016/S1470-2045(14)70025-7