研究課題/領域番号 |
26461973
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
吉田 和弘 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50230727)
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研究分担者 |
円谷 彰 横浜市立大学, 大学病院, 准教授 (00236936)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 5FU / 耐性 / TS / OPRT / 胃癌 |
研究実績の概要 |
これまで胃癌術後補助化学療法としてS-1の効果を検討したACTS-GC試験の試料によるmRNAの発現解析により、バイオマーカーの探索を行ったところ、Tymidylate synthase (TS)高発現はS-1の効果は高く、Orotate phosphoribosyl transferase (OPRT)は予後とは関連しなかった。これまで5FU耐性因子としてTS高発現、OPRT低発現が知られていたが、ACTS-GCの解析結果はこれらと矛盾する。よって胃癌細胞株MKN45およびその耐性株MKN45/F2Rを用いて、5FUの作用機序および耐性機序を検討行った。5FUはOPRTの作用を経てFdUMPとなり、TSを阻害してdTMPを枯渇させることによりDNA合成障害を生じる薬剤と考えられている。耐性株は野生株と比較し5FUに52倍耐性で、OPRT低発現、TS高発現であり、耐性株ではTS阻害に高容量の5FUを要し、これまでの知見と矛盾はしない。しかし、5FUはdTMPやThymidineで阻害できず、また、耐性株はOPRTの作用を経ないFdUMPやFdUに対しても耐性であった。これらのことから5FUは単にTSを阻害する薬剤ではないと考えられ、また、FdUMPを直接解毒する耐性機序の存在が示唆され、今後はFdUMPの解毒について検討する必要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ATCS-GCのバイオマーカー探索の結果を踏まえ、基礎的検討の追加が必要になった。他耐性因子としてのTS高発現、OPRT低発現は主に基礎的研究の結果に基づいて述べられてきたものであり、実際、細胞株においては再現性もよい。ただし、臨床検体を用いた検討において再現されていないということは、それを踏まえて基礎的な検討を追加する必要がある。臨床試験の検体を用いたバイオマーカーの検索は手間や金銭を多く費やすものであり、その根拠となる仮説に誤りがあると、それらを無駄に浪費することになるため、仮説の検討は慎重に行っておく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的検討においては、胃癌細胞株とその耐性株における耐性機序の検討をさらに進める。今後、TAS114(dUTPase阻害薬)が臨床応用されていくことを踏まえて、バイオマーカーとして何を検討するのかも再検討する必要がある。具体的には、TSやOPRTに関連しないFdUMPの解毒について検討をすすめる。これまでの検討において耐性株ではFdUMPの細胞内濃度を低下させる耐性機序が存在することはほぼ間違いなく、この機序を阻害することが5FUの効果を上げるという傍証を得ている。また、TAS114は5FU代謝産物のDNA取り込みを増加させる薬剤であり、5FUのDNA取り込みについてはこれまで検討は少ない。dUTPase阻害薬が5FUのDNA取り込みを増加させることはすでに報告があり(Int J Oncol. 2015;46(6):2327-34)、dUTPaseのmRNA発現量はOxaliplatinと5FUの相乗効果にも関連する(Nucleic Acids Res. 2009 Jan;37(1):78-95.)ため、胃癌の術後補助療法としてのOxaliplatinの位置づけが現在議論されている背景と合わせ、バイオマーカーの候補として注目するべきと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな仮説の検討や基礎的検討の追加の必要性から、臨床検体からのRNA抽出、cDNA生成を進行させられない状態にある。
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次年度使用額の使用計画 |
検討が進み次第、逐次、臨床検体による検討を進める予定である。
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