研究課題/領域番号 |
26461978
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西崎 正彦 岡山大学, 大学病院, 講師 (30379789)
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研究分担者 |
田澤 大 岡山大学, 大学病院, 助教 (90415513)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胃癌 / 慢性炎症 / 微小環境 / 悪性化進展 / p53 |
研究実績の概要 |
慢性胃炎に伴う炎症性微小環境は胃癌発生の重要な危険因子である。しかし、胃癌の浸潤や転移などの悪性化進展における炎症性微小環境の関与は不明である。我々は、これまで炎症性微小環境による大腸癌・線維肉腫の発生や悪性化進展機構の解明を行い、癌抑制遺伝子p53、FHITの発現誘導による癌細胞への細胞死の誘導や悪性化進展の抑制効果について検証してきた。本研究では、胃癌の悪性化進展過程における炎症性微小環境の関与とその分子機構を明らかにし、癌抑制遺伝子p53の誘導による癌幹細胞と微小環境を制御する新たな抗悪性化療法の開発を行う。
平成26年度は、分化度の異なるヒト胃癌細胞株4種類(高分化型腺癌(MKN7)、中分化型腺癌(MKN74)、低分化型腺癌(MKN45)、未分化型スキルス癌(KatoIII))と微小環境を構成するヒト線維芽細胞株2種類(WI-38、FEF3)との相互作用について検証した。まず、4種類の胃癌細胞株を無血清培地で48時間培養し、細胞成分を除いた無血清培地をそれぞれ回収した。各胃癌細胞株由来の無血清培地でヒト線維芽細胞株WI-38、FEF3を5日間培養し、線維芽細胞の活性化について形態学的変化や癌関連線維芽細胞マーカー(-SMA、FAP)の発現をウェスタンブロット法で検証した。高分化型胃癌細胞株MKN7と中分化型胃癌細胞株MKN74由来の無血清培地の処理によって、ヒト線維芽細胞株WI-38、FEF3は活性化を示す筋線維芽細胞株様の紡錘形で密に収縮した形態変化を示し、-SMAの発現は増加したが、FAPの発現は変化しなかった。一方、低分化型胃癌細胞株MKN45と未分化型スキルス胃癌細胞株KatoIII由来の無血清培地の処理によって、線維芽細胞株は活性化を示す形態変化やマーカーの発現増加を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、4種類の分化度の異なるヒト胃癌細胞株と2種類のヒト正常線維芽細胞株を用いた相互作用を検証し、高分化型や中分化型のIntestinal type(腸型)の胃癌細胞が低分化型や未分化型のDiffuse type(びまん型)の胃癌細胞よりも活性化線維芽細胞を誘導する能力が高い事を明らかにした。今後、活性化線維芽細胞やマクロファージ細胞と胃癌細胞との相互作用をさらに検証する事で、炎症性微小環境が胃癌細胞の悪性化に関与する分子機構を明らかにする事が期待され、計画はおおむね順調に進展していると評価できる
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、炎症性微小環境に関連するマクロファージ細胞と胃癌細胞との相互作用を検証し、活性化線維芽細胞やマクロファージ細胞が胃癌細胞の悪性化(遊走能、浸潤能)を促進する効果を確認する。さらに、各胃癌細胞株に対する癌抑制遺伝子p53を誘導するアデノウイルス製剤の治療効果についての検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
活性化線維芽細胞マーカーをウェスタンブロット法で評価するために抗体の購入を想定していたが、予定よりも少ない量の抗体での検討が可能となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
活性化線維芽細胞やマクロファージ細胞との相互作用による胃癌細胞の悪性化を検討するため、悪性化の指標となる上皮間葉転換や癌幹細胞に関連するマーカーの発現を検討するための抗体購入に繰り越した研究費を使用する。
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