研究課題
本研究では、胃癌の悪性化進展過程における炎症性微小環境の関与とその分子機構を明らかにし、癌抑制遺伝子p53の誘導による胃癌細胞と微小環境を制御する新たな抗悪性化療法の開発を行う。平成28年度は、難治性胃癌であるスキルス胃癌由来で腫瘍抑制遺伝子p53の遺伝的背景が異なる3種類のヒト胃癌細胞株(NUGC4(p53正常型)、GCIY(p53変異型)、KatoIII(p53欠損型))を用いて、2種類のp53誘導性アデノウイルス製剤(非増殖型Ad-p53、癌特異的増殖型OBP-702)のアポトーシスとオートファジーの誘導能をウェスタンブロット法で検討した。全ての細胞株において、Ad-p53は軽度のアポトーシス誘導を認め、OBP-702は著明なアポトーシスとオートファジーの誘導を認めた。次に、腹膜播種転移巣を想定して3次元培養法で作製したスフェロイドに対するAd-p53とOBP-702の治療効果をLive/Deadアッセイとカスパーゼ3アッセイにて検討した。Ad-p53はスフェロイド辺縁部のみにアポトーシスによる死細胞を誘導したのに対し、OBP-702はスフェロイド辺縁部と中心部にアポトーシスによる死細胞を誘導した。さらに、2種類のp53誘導性ウイルスの細胞死誘導におけるチロシンキナーゼ型受容体(RTK)の発現変化をウェスタンブロット法で確認したところ、OBP-702はAd-p53よりも強力にc-Met、EGFR、FGFR2の発現を抑制する事を確認した。最後に、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したp53変異型GCIY細胞株を用いて胃癌腹膜播種マウスモデルを作製し、OBP-702がAd-p53よりも強力に腹膜播種転移を抑制する事を確認した。以上の結果から、OBP-702は複数のRTKの抑制を介してスキルス胃癌の腹膜播種転移を抑制する可能性が示唆された。
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