研究課題/領域番号 |
26461979
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉野 茂文 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (60294633)
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研究分担者 |
坂本 和彦 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50420526)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胃癌 / 化学療法 / nab-paclitaxel / SPARC / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
進行・再発胃癌を対象にS-1投与後の2次化学療法としてのnab-paclitaxel投与の第II相臨床試験を実施するためにプロトコールを作成した。閾値奏功割合を10%、期待奏功割合を25%と仮定し、α=0.05、β=0.2として必要症例数が33例となるため、37例を登録目標症例数とした。nab-paclitaxelは3週間に1回、180mg/m2の量で投与しこれを1コースとして継続することとし、臨床効果は、RECISTによる腫瘍縮小効果と全生存期間、無増悪生存期間により評価する予定である。腫瘍縮小効果は4週毎のCT検査により判定する。プロトコールはIRBにて承認され登録を開始し、現在までに4例登録された。臨床評価はこれから行う予定である。 また胃癌組織におけるSPARCの免疫染色の技術を安定させるために、当科における胃癌手術症例の腫瘍部の組織を用いてSPARCの免疫染色を試みた。まず適性抗体を決定するために、3種類の抗SPARC抗体で染色を行い、SPARCモノクロナール抗体(AON-5031、Santa cruz社)が最も染色性が良く、今後本研究においては同抗体を用いて研究することに決定した。染色条件としては、濃度を1000倍、インキュベーションを24℃で60分と決定した。また、胃癌では癌細胞は染色されず、癌細胞周囲間質に存在する線維芽細胞が染色されることが判明した。 されにわれわれが決定した条件でStageⅡ、Ⅲ胃癌35例においてSPARCの免疫染色を行い、臨床病理学的所見(性別、年齢、ステージ、分化度、組織型、間質量、リンパ節転移頻度、脈管侵襲の有無)とSPARCの染色強度との関係を検討したが相関は無かった。一方、SPARC発現と全生存率、無再発生存率の関係を検討したが、SPARC髙発現群が有意に良好な全生存率を、有意ではないが良好な無再発生存率を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃癌におけるnab-paclitaxelの有効性を確かめるために、進行・再発胃癌を対象にS-1投与後の2次化学療法としてのnab-paclitaxel投与の第II相臨床試験のプロトコールを作成した。プロトコールがIRBで承認され臨床試験を開始することができた。 またSPARCの免疫組織染色の条件設定を行うために多数例の胃癌組織の免疫組織染色を行い、SPARCの発現を判定するための適正な条件設定を行うことができた。さらにはこの適正な条件設定でSPARCの免疫組織染色を行い、胃癌患者ではSPARCの発現が高いと予後が良好であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
進行・再発胃癌に対するnab-paclitaxel投与の第II相臨床試験を継続し症例を集積する。平成27年度、28年度と登録を継続しは臨床効果を判定する。 また平成26年度同様、胃癌手術症例のSPARCの免疫染色を症例を増やして検討し、SPARCの発現と予後の関係を再評価する。さらにはnab-paclitaxel投与患者の胃癌組織を用いてSPARCの免疫組織染色を行い、SPARCの発現とnab-paclitaxelの有効性との関係を評価する。 また、患者末梢血よりDNAを抽出しSPARCの遺伝子多型をTetra-primer amplification refractory mutation system (ARMS)-PCR法および直接シークエンス法により解析する。SPARCの遺伝子多型は、rs1049539 (Exon 1, G/A allele)、rs1049544 (Exon 4, G/C allele)、rs1130643 (Exon 5, G/A allele)につき解析する。
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