研究課題/領域番号 |
26461980
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 修平 九州大学, 大学病院, 講師 (10706914)
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研究分担者 |
岡野 慎士 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10380429) [辞退]
森田 勝 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (30294937)
北尾 洋之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30368617)
池田 哲夫 九州大学, 大学病院, 准教授 (60585701)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 講師 (70380392)
佐伯 浩司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80325448)
中島 雄一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (40733564)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNA2重鎖修復 / 染色体不安定性 |
研究実績の概要 |
【背景】正常細胞(BRCA1/BRCA2非欠損細胞)においては,PARP阻害薬の細胞毒性は少ないと考えられているが,ゲノムレベルでの報告は少ない.【目的】BRCA1/BRCA2非欠損ヒト細胞におけるPARP阻害薬のゲノム不安定性を検討する.【対象と方法】BRCA1/BRCA2非欠損ヒト細胞を用いて.PARP阻害薬のゲノムに対する毒性の指標である姉妹染色分体交換試験 (SCE:sister chromatid exchange assay)と染色体異常解析を行った.【結果】olaparibを投与した細胞では,SCE,染色体異常の増加をそれぞれ,4.4-9.6倍,1.7-5.5倍認めた.また,olaparib, ABT-888は,細胞内PARP活性を著しく抑制し(97%),BRCA1/BRCA2欠損細胞はこの2剤に高感受性を示した.一方,BSI-201では,SCEの増加を認めず,PARP活性の抑制はolaparib,ABT-888と比較し軽度であり(60%),BRCA1/BRCA2欠損細胞に対する感受性も軽度であった.よって,PARP活性阻害作用とSCEの増加,つまりゲノム不安定性の増加は相関があると考えられた.また,PARP阻害薬によって引き起こされるゲノム不安定性は,薬剤依存性,用量依存性であった.さらに,olaparibは,細胞毒性をきたさない濃度において,シスプラチンが引き起こすSCEを1.8-1.9倍,染色体異常を1.5倍増加させた.よって,PARP阻害薬は,DNA損傷作用を有する薬剤との併用で,ゲノム不安定性を増強すると考えられた.【考察】若年者,非腫瘍性疾患や早期癌の治療,また予防的投与としてPARP阻害薬を使用する場合は,特に十分な配慮が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BRCA遺伝子正常ヒト細胞株に対する各PARP阻害薬(olaparib, ABT-888, BSI-201)が誘導するSCE(姉妹染色分体交換)の頻度の変化、染色体の構造異常に関するデータをまとめた。健常人より採取したprimary T cellを用いて同様の検討を行い、着実にデータの蓄積がすすんでいる。また、PARP activity assayにより、各PARP阻害薬のPARP阻害効果の評価も進めており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
近年、癌の宿主免疫機構に重要な役割を果たしているPD-L1, PD-1阻害剤の臨床試験が進んでいる。食道癌においても、PD-L1, PD-1などの腫瘍免疫回避機構に関与する分子に着目した治療標的、予後、再発マーカーの検索を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度使用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
抗体、細胞培養用試薬を購入する予定である。
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