研究実績の概要 |
胃癌組織におけるEZH2の発現を調べるため胃癌切除検体の病理切片を使用し、癌細胞における発現レベルを評価した。168症例を用いてEZH2の発現レベルを三段階に評価(0=陽性細胞≦10%,1=陽性細胞>10%,≦50%,2=陽性細胞>50%)し発現レベルと臨床病理学的因子に関して検討を行った。腫瘍深達度(p=0.043),リンパ管侵襲(p=0.017),S-p53Ab(p=0.049)との相関が認められた。今回の検討においては傾向は認められたものの、EZH2の発現と予後との相関は示されなかった(p=0.174).しかしながら胃癌切除症例におけるEZH2の発現は93.2%(強陽性:72.9%)であり胃癌の発癌進展に関与する可能性は高く、その発癌進展に関するメカニズムを癌抑制遺伝子であるRUNX3の不活化と合わせて解析中である。また今回癌患者血清中には比較的早期から腫瘍抗原に対するIgG抗体が誘導されることからEZH2抗原の精製目的にEZH2蛋白の発現を行い、可溶性試験を行った後にキレートカラムの精製を行い、ELISAキットの作成を行い、抗体陽性率を検討した。同時に組織中におけるEZH2の発現と血清中の抗p53抗体の陽性率との相関が認められていたため、胃癌組織における抗p53抗体の陽性率を検討した。抗p53抗体の測定はanti-p53 detection kit (MESACUP anti-p53 Test; Medical and Biological Laboratories (MBL)を用いて行い、陽性率がStageIで10.3%と従来の分泌型腫瘍マーカー(CEA 8.7%, CA19-9 2.4%)と比較して有用と考えられた。EZH2の測定キットはうまく感度が得られなかったため、anti-p53 detection kitを参考に調整中である。胃癌のheterogenityにおけるEZH2の関与に関しても検討中である。
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