肝様腺癌は血清AFPを高発現し、高率に肝転移を起こす胃癌の特殊型であり、薬剤への抵抗性を示す予後不良の疾患である。本研究は、当研究室で樹立された肝様腺癌細胞株を用いて遊走、浸潤に関わる因子を同定し、有効な治療戦略を確立することを目標とした。その成果として、研究初年度に十二指腸乳頭部から発生した肝様腺癌細胞株の樹立を報じた論文を発表した(Int J Oncol. 2014;44(4):1139-45)。次に、この細胞株と同様に肝様腺癌由来で血清AFPを産生する細胞株FU97とGCIYを入手しRNAの抽出を行った。また、当研究室では膵癌の細胞株をコラーゲンゲル内で三次元培養する手法を確立し、光顕に加えて電顕レベルの解析が行われており、入手した細胞株FU97とGCIYで三次元培養を行った。この過程で、コラーゲンゲルの厚みやゲル内に添加する物質、培地の量、気相‐液相界面法の有効性に関する検討を行い、細胞株FU97とGCIYに適した培養条件を確立した今後はこれらの培養系を用いて、肝細胞癌に発現される代表的な蛋白であるGPC3の発現量をRNAiの応用によって低下させ、本研究で確立された三次元培養法によって細胞の発育が制御されるか否かについて検証を進める計画である。
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