研究課題
われわれは横浜市立大学付属病院における外科手術で得られた胃癌組織と近接正常粘膜のペアの凍結検体からmRNAを抽出してStage 2・3胃癌の根治切除後のリスク層別化マーカー検索を進め,10種類のマーカー候補を同定した。次に神奈川県立がんセンターの凍結検体を用いて再現性を検証した結果,3種類の遺伝子(KIAA1199, SPARC, INHBA)の再現性が得られた。これらの予後不良因子のうち,KIAA1199はS-1の補助化学療法を施行したStage 2・3胃癌においても予後不良因子であったことから,KIAA1199を胃癌細胞でノックダウンした結果,KIAA1199が増殖能および浸潤能に強く関わり,さらに5-FUに対する耐性因子であることを発見した。そこでこれらの成果をもとに,バイオマーカーを用いた胃癌の再発リスク層別化キットの作成を目標とし,約1000症例のStage2・3胃癌の組織アレイを作成して免疫染色をおこなった。またKIAA1199をターゲットとした低分子抗癌剤の開発を目標とし,約1000種類の低分子抗癌剤候補の設計をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
1) バイオマーカーを用いた胃癌の再発リスク層別化キットの開発研究では,最も臨床的に実現性が高いと考えられるホルマリン固定パラフィン包理切片を用いた免疫染色によるリスク層別化を考え,2つのハイボリュームセンターの約500症例ずつ,合計1000症例のStage 2・3胃癌の組織アレイの作成を行い,マーカー候補の免疫染色をおこなった。2) KIAA1199をターゲットとした低分子抗癌剤の開発では,Super Computerを用いてKIAA1199の分子構造を標的とした約1000種類の低分子抗癌剤候補の設計をおこなった。
1) バイオマーカーを用いた胃癌の再発リスク層別化キットの開発研究では,組織アレイを用いたマーカー候補の免疫染色の結果を解析し,Stage 2・3胃癌の根治切除後の再発リスク層別化マーカーの組み合わせを検索する。2) KIAA1199をターゲットとした低分子抗癌剤の開発では,設計した約1000種類の低分子抗癌剤候補のコンパウンドを作成し,胃癌細胞株をもちいて,MTT assayやcolony formation assayにてスクリーニングを行い,単独投与での有用性を評価し,候補薬剤を絞り込む。
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Anticancer Research
巻: 34 ページ: 2303-2309
Journal of Surgical Oncology
巻: 109 ページ: 836-840
10.1002/jso.23602