研究実績の概要 |
本研究で,当初リスク層別化候補として同定されたSPARC, INHBA, KIAA1199では,単独,組み合わせ共にStageII/III胃癌の再発リスクを有意に層別化することはできなかったため,遺伝子およびタンパクレベルでリスク層別化候補について再検索を行った。 遺伝子レベルの検索では,統計解析方法を見直して再検索し,上記候補に加えて,11遺伝子:ERBB2, CXCR4, VSNL1, MMP11, CCR7, MRP1, CEACAM7, TP53, EZH2, PDGFRB, VCAM1をリスク層別化候補として同定した。 タンパクレベルの検索では,対象症例をT4a Nx M0,StageIII胃癌で根治切除後にS-1の補助化学療法を施行した症例に限定し,5年以上無再発・生存中の症例12例(無再発症例)と,3年未満で再発・死亡した症例12例(再発症例)の各胃癌組織からタンパク質を抽出し,液体クロマトグラフィー質量分析を用いた探索的プロテオミクス解析を行い,無再発症例と再発症例間で,max fold change>2かつAnova (P)<0.001 で発現に有意差を認めるタンパク質を探索した結果,4つのタンパク質:SPARC, CLC, PRG2, PRG3がリスク層別化マーカーの候補として同定された。 以上のマーカー候補について,tissue microarrayを用いた免疫染色にてその発現を検討すると,SPARC, EZH2, ERBB2, p53の組み合わせで再発リスクを層別化(P<0.0111)することが可能であった。 KIAA1199をターゲットとした低分子抗癌剤の開発では,12種類に絞った低分子抗癌剤候補を用い,胃癌に対する既存の薬剤との併用効果をchou talalay法で検討した結果,一つの低分子抗癌剤で5-FUとの相乗効果が確認された。
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