研究課題
【背景】様々な癌種で原発巣周囲のリンパ管新生は予後不良因子であることが報告されており、腫瘍周囲のリンパ管新生は癌細胞転移における第一段階と考えられている。膵頭部癌や頭頚部癌ではリンパ行性転移の機序にリンパ節内のリンパ管新生が寄与することが報告されているが、胃癌についての報告はない。【目的】胃癌リンパ節内のリンパ管新生を同定しリンパ節転移やその他の臨床病理学的因子との関連について検討した。【方法】2011年に当科で切除したpT2以深の胃癌52例を対象にリンパ節のパラフィン包埋切片を抗D2-40抗体で免疫組織染色を行い、リンパ管を同定してリンパ管新生をLVD(lymphatic vessel density)により評価した。次に抗サイトケラチン抗体を用いて転移巣の大きさに基づきリンパ節を転移なし・ITC・微小転移・転移の4群に分類しLVDとの関連を検討した。【結果】1596個のリンパ節について検討した。転移リンパ節は225個で転移のないリンパ節は1371個だった。転移リンパ節内では転移のないリンパ節より有意にLVDが増加していた。リンパ節を転移巣の大きさで比較すると、転移巣の大きさに伴いLVDも増加した。さらに症例別では、pN1よりpN3で有意にLVDが増加していた。pN3症例ではdiffuse type、ly(+)症例でLVDが高値だった。pN(+)ではpN(-)と比較し転移のないリンパ節でもLVDが増加していた。【結語】胃癌において、リンパ節内のリンパ管新生は転移がなくても腫瘍の進行に伴い増強されることが示唆された。これよりリンパ管新生は胃癌転移の第一段階でリンパ節転移を介する遠隔転移に関与するかもしれないと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画していたリンパ管新生の胃癌組織内の意義については問題なく進んで予定通りの結果を得た。また、リンパ管内皮細胞の分離も順調に進んでおり、当初の計画通りに研究が遂行できていると考えられる。
今後、リンパ管新生と免疫細胞との関連について研究を進めるのに十分な試料があり、計画通りに遂行できると考えられる。
予定していた旅費をしようしなかったため。
研究に使用する物品費(抗体などの消耗品)に使用する予定
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Gastrointestinal Surgery
巻: 18 ページ: 481-491
10.1007/s11605-013-2407-y.