研究実績の概要 |
癌幹細胞の特性である薬剤耐性能について癌幹細胞様クローンを樹立した。食道癌治療におけるキードラックであるドセタキセルを用いた薬剤誘導法により樹立した食道扁平上皮癌細胞由来TE8-TXT及びTE11-TXTについてmiRNAの網羅的解析を施行した. ExpressionSuite Software v1.0により解析を行った結果, 2つの細胞間でmiRNAの発現変動が共通しているものが67個あった. ドセタキセルの作用機序は, 細胞内微小管の脱重合阻害による細胞分裂の抑制である. 細胞内において張力発生分子モーターであるmitotic centromere-associated kinesin (MCAK)とその活性化因子inner centromere KinI stimulator (ICIS)が微小管の脱重合に重要な役割を担っている. 網羅的解析より得られた変動miRNAのプロファイルをもとに, データベース検索及びPCR法により標的分子ICIS/MCAKとの発現の相関について検証した結果, miR-125a-5pの発現変動との相関性が確認された. これらの結果を検証するため, miR-125a-5p分子のmimic及びinhibitorを野生株にそれぞれ導入し発現調整を行った. その結果, miR-125a-5pの発現抑制株では, mimic導入株に比べICIS及びMCAK分子の発現上昇が確認された. また, miR-125a-5p発現抑制株を用いてドセタキセルに対する薬剤抵抗性をapoptosis assayにより評価を行った. その結果, miR-125a-5pの発現抑制株において有意なアポトーシス抵抗性が示された. 以上の結果より, 癌幹細胞のドセタキセルに対する抵抗性においてmiR-125a-5p発現変動が関与していることが示唆された. 一方, 食道癌患者由来血清中におけるmiRNAの網羅的発現変動解析について東レの3D-Geneシステムを用いて解析を進めている. カットオフ値の基準の設定には, 健常人由来の血清をコントロールとして用いている. 現在, 食道癌患者10例, 健常人1例の解析が終了している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実験は研究計画に従って, miRNA arrayによる網羅的解析により発現変動を示したmiRNAについて, miRBaseデータベース解析及びIPA(Ingenuity Pathways Analysis)により候補miRNA及びターゲットmRNAとの相互性を検証した. この結果を踏まえ癌幹細胞の重要な特性である薬剤抵抗性を検証するため細胞機能解析を実施した. 結果として, 機能性miRNAの同定がなされ, 研究計画通りに進行している. 癌幹細胞のもう一つの重要な特性である浸潤・転移能については, モデル細胞を用いたmiRNA arrayによる網羅的発現解析が終了している. 現在, データベース及びIPAによりmiRNA-mRNA分子間統合解析を進めている.
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