研究課題/領域番号 |
26462001
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
鍋谷 圭宏 千葉県がんセンター(研究所), 医療局・食道・胃腸外科, 部長 (40322028)
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研究分担者 |
永瀬 浩喜 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 研究所長 (90322073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食道癌 / ゲノム / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
いまだ難治のがんの一つである食道がんの治療は侵襲が大きく、早期発見ならびに予後予測を行うことは個別化医療を行う上で有用である。 食道がん患者を早期発見できるバイオマーカーの同定を行うため、がんで高頻度に変異が見られる領域に限定したメガベースオーダーでのエクソーム解析をコホートスタディで追跡中の消化器がんを発症した40例と健常者コントロール20例で行った。さらに5例の食道がん及びその非癌部について同様の解析を行い、同定された28か所の遺伝子変異をキャピラリーシークエンサーで確認した。その結果21か所の変異が確認され、4か所のみが、非癌部にも同様の変異が確認された。未知の変異は7つ、うち一つがストップコドンを示すナンセンス変異として同定された。 さらに遺伝子変異や多型の解析を行うため、コホートでの消化器がん発症例を追加し、これまでの解析と合わせ、がん発症83症例と健常者33症例での解析を行った。遺伝子変異解析の結果、アミノ酸置換を伴う変異が認められ、蛋白質の構造や機能に影響を与えることが予測される遺伝子として、5遺伝子を選択した。 一方で、術前化学療法を受ける進行食道癌切除症例で既存のバイオマーカーの意義を調べ、過去の手術症例の臨床データから血清SCC-Agの予後予測因子としての有用性を見出した。簡単に測定可能な血清SCC―Agと今後新たに同定される(早期発見の)マーカーとの間で、予後予測因子としての意義も対比して検討できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化器がん症例のコホート研究から追跡調査での消化器がんの発症症例のピックアップと核酸抽出が終了し、消化器がん発症症例83例と非癌症例(70歳までがんの既往歴、家族歴がなく腫瘍マーカーが陰性であった症例)33例について遺伝子変異解析が終了し、その同定された変異のキャピラリーシークエンサーでの確認実験も終了し、おおむね良好な結果が得られた。次年度、臨床検体である消化器がん及び非癌部での遺伝子多型解析を行う準備は整っている。
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今後の研究の推進方策 |
インフォームドコンセントの取れた消化器がん症例で、がん及び同一患者の非癌部から得られたDNAペアあるいは組織がバイオバンクに収集されており、これらの症例の様々な臨床情報を基に症例を選択し、これまでの解析で見出された遺伝子変異が検出されるか検討を行う。さらに共同研究により消化器がんコホートで得られる生殖細胞遺伝子の変異・多型解析結果を加え、食道がんの発症や予後に関係するバイオマーカーの同定のための解析を進める。解析は409のがん関連遺伝子の全エクソンを解読することで、1.75Mbの領域の配列解読を癌および非癌部で行う。このことで、HotSpot以外の比較的希少ながん関連遺伝子の機能的にがんに関与すると考えられるアミノ酸の変化や転写終了コドンを創出するミッセンスおよびナンセンスミューテーションを同定し、食道がんでの新たな機能関連遺伝子の同定を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床情報を基に遺伝子変異解析を行う症例を選択し、遺伝子多型解析を行う予定であったが、コホートで収集した検体での解析をより確かなものにするため、コホート症例を増やし変異解析を行った。そのため、臨床検体での遺伝子変異解析を次年度に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度でもあり、計画に基づいて適切に使用する予定である。
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