研究課題/領域番号 |
26462004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
榎本 剛史 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10628762)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 癌幹細胞 / 新規診断法 / CD44v9 |
研究実績の概要 |
筑波大学附属病院において、直腸癌症例に対して定められたプロトコールに従って術前化学放射線療法を施行した。本治療ならびに手術検体などの取扱いは十分なインフォームドコンセントを得た上で行った。平成26年度においては、新たに2症例の登録が得られ、現在まで合計17症例の集積を得られている。この治療法は平成27年以降も継続して行う。具体的な症例の適応は、腹膜翻転部以下にかかる下部直腸癌で、深達度cT3, cT4の症例かつ切除標本の外科的剥離面陰性確保が困難な症例である。放射線療法として骨盤内に50glyを照射(2.0gly/回 週5日)、化学療法としてTS-1を80mg/m2を放射線照射日に投与した。これまでの研究で直腸癌に対する化学放射線療法により、組織学的奏効率50%、術前のdown staging率が77%を示す術前化学放射線療法のプロトコールによる高い奏効率にも関わらず、局所再発率26%、遠隔転移率48%といった治療成績を報告している。このうち7症例について、癌幹細胞マーカーであるCD444v9の発現を調べ、治療前に比べて治療後の検体で明らかに増加していることを再発に関与している可能性があることを報告した(日本外科学会 榎本ら)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロトコールに従って、術前化学放射線治療が行われた後に摘出された癌組織中のCD44v9 の発現の変化を調べ、術前の原発巣の生検検体での発現と比較した。方法は、2007年1月~2012年12月に当科で施行した局所進行直腸癌のうち、術前治療(放射線化学療法または化学療法)後に根治切除が行われた7例を対象。術前生検検体と治療後の原発巣の切除標本について、それぞれCD44v9で免疫染色を施行。CD44v9の発現をscore化して以下の項目について検討した。①術前生検検体と治療後癌組織でのCD44v9発現②組織学的治療効果とCD44v9発現③CD44v9発現と再発の有無。score化の方法は、染色率と染色強度からCD44v9発現の程度を0~3に数値化。癌組織中から200倍の視野で、生検検体では1fieldを、手術検体では5fieldを選択して平均を求めた。 結果として①CD44v9発現scoreは、術前生検検体では0.6であったが、治療後には1.3と有意に上昇。②組織学的効果判定では、grade2 2例、grade1a 4例、grade0 1例であり、平均発現scoreはそれぞれ0.3、1.6、2 あった。術前治療効果が低いほどCD44v9発現scoreは高かった。③再発群と非再発群におけるCD44v9発現scoreはそれぞれ、1と1.45であり、明らかな差は認めなかった。以上の結果が得られており、当初の予定通りに研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究より、局所進行直腸癌においては、化学放射線療法により腫瘍は縮小効果が得られるものの、CD44v9の発現は治療前に比べ治療後で、さらに治療効果の低い腫瘍ほど高いことを報告した。このことからCD44v9発現が多い腫瘍は、治療抵抗性が高いことが示唆されており、発現と再発の関係を、平成27年度も引き続き症例の集積を行って検討を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を遅滞なく進めることができたため,動物,試薬等が計画よりも少ない使用量となった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度も継続して本研究を行う予定である。局所進行直腸癌症例を新たに集積するとともに、CD44v9などの免疫組織学的検討を追加する。また学会発表、論文報告などを継続して行う。
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