研究課題/領域番号 |
26462012
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水島 恒和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄付講座教授 (00527707)
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研究分担者 |
西村 潤一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20379209)
飯島 英樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90444520)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / 脂肪組織由来幹細胞 |
研究実績の概要 |
「消化器外科手術に伴う難治性皮膚瘻対する自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた組織再生医療の臨床応用」(UMIN000007316)において、消化器外科手術に伴う臓器、体腔内感染、縫合不全に起因する皮膚瘻を有し、ドレナージ、洗浄、掻爬、抗生剤投与や人工肛門造設などによる治療を行っても1ヶ月間以上治癒が得られていない炎症性腸疾患(IBD)患者6名に幹細胞治療を実施した。 対象症例は男性4例,女性2例,年齢は中央値36.5歳(27-55歳)。原疾患は潰瘍性大腸炎4例(直腸カルチノイド術後1例),クローン病2例であった。全例で脂肪組織の採取,自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞濃縮細胞(adipose-derived regenerative cells:ADRCs)液調整,移植手術が実施可能であった。 ADRCsの移植は全例でプロトコールの規定に従い,体表より瘻孔周囲組織内に濃縮細胞液の4分の1量を注入,内視鏡を使用して消化管腔側より粘膜下に4分の1量を注入した後,残りの半量をトロンビン溶液と混合し,フィブリノゲン溶液と共に瘻孔内に注入,ADRCsを含んだフィブリン糊で瘻孔を充填した。手術時間はADRCsのADRCs濃縮細胞液調整時間を含めて中央値236.5分(204-297分),出血量は瘻孔の掻爬に伴うものも含めて中央値20ml(0-65ml)であり,脂肪採取,移植手術に関連する重篤な合併症は認めなかった。 組織再生の評価はプロトコールに従い,幹細胞治療実施後1 週、2 週、4 週、12 週、24 週に臨床症状(脂肪組織採取部位,細胞移植部位)の観察,臨床検査(血液,尿),画像検査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「消化器外科手術に伴う難治性皮膚瘻対する自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた組織再生医療の臨床応用」(UMIN000007316)において、消化器外科手術に伴う臓器、体腔内感染、縫合不全に起因する皮膚瘻を有し、ドレナージ、洗浄、掻爬、抗生剤投与や人工肛門造設などによる治療を行っても1ヶ月間以上治癒が得られていない炎症性腸疾患(IBD)患者6名に幹細胞治療を実施した。 対象症例は男性4例,女性2例,年齢は中央値36.5歳(27-55歳)。原疾患は潰瘍性大腸炎4例(直腸カルチノイド術後1例),クローン病2例であった。全例で脂肪組織の採取,自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞濃縮細胞(adipose-derived regenerative cells:ADRCs)液調整,移植手術が実施可能であった。 ADRCsの移植は全例でプロトコールの規定に従い,体表より瘻孔周囲組織内に濃縮細胞液の4分の1量を注入,内視鏡を使用して消化管腔側より粘膜下に4分の1量を注入した後,残りの半量をトロンビン溶液と混合し,フィブリノゲン溶液と共に瘻孔内に注入,ADRCsを含んだフィブリン糊で瘻孔を充填した。手術時間はADRCsのADRCs濃縮細胞液調整時間を含めて中央値236.5分(204-297分),出血量は瘻孔の掻爬に伴うものも含めて中央値20ml(0-65ml)であり,脂肪採取,移植手術に関連する重篤な合併症は認めなかった。 組織再生の評価はプロトコールに従い,幹細胞治療実施後1 週、2 週、4 週、12 週、24 週に臨床症状(脂肪組織採取部位,細胞移植部位)の観察,臨床検査(血液,尿),画像検査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
調整された濃縮細胞液の解析の結果では,ADRCs数は中央値7.59×107(9.60×106-1.42×108),細胞生存率中央値89.2%(84.3-93.0%),CD45-CD31-CD34+細胞割合は中央値24.2%(1.9-49.7%)であった。瘻孔閉鎖率は4週,12週が83.3%(5/6例),24週が100%(6/6例)であった。 今後はプロトコールに従い,データセンターによる症例報告書の確認作業を経て,データを確定する。また並行して,画像による評価法の検討を行う。画像評価法としては,幹細胞治療実施後2 週、4 週、12 週、24 週に撮影したCT検査における、組織欠損部位(瘻孔充填部位)の容積、CT 値、 (絶対値、周囲組織との比較値)などを検討し、経時的な組織再生評価法を確立する。また,対象症例の臨床情報(体重,BMIなど)や脂肪組織採取量とADRCs数,細胞生存率,CD45-CD31-CD34+細胞割合と治療効果との相関についても検討する。 幹細胞治療実施後に実施するCT検査では,治療直後であれば組織欠損部位(瘻孔充填部位)を確認可能である。しかし,経過中に瘻孔充填部位が不明瞭になる症例も少なくない。その様な症例では,画像による組織再生評価が困難である可能性が考えられる。その場合は,移植した細胞と治療効果との相関についての検討が中心となるため,今回の臨床研究以外の手術症例(IBD患者,非IBD患者)から採取された皮下脂肪組織内に存在する脂肪組織由来幹細胞の特性についての検討追加を予定する。また臨床研究参加症例については,プロトコールにおける観察期間終了後のIBD活動性と瘻孔閉鎖との関連についても検討を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
SIGMA Thiazoly Blue、セラムチューブを購入し、今年度の実験に必要な物品を購入し終えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
対象症例の臨床情報(体重、BMIなど)や脂肪組織採取量とADRCs数、細胞生存率、CD45-CD31-CD34+細胞割合と治療効果との相関について検討するのに必要な物品を購入するため。
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