研究課題
炎症性腸疾患(Inflammatory bowel diseases:IBD)患者(クローン病3例,潰瘍性大腸炎2例)および非IBD患者(大腸癌5例,乳癌1例)の皮下脂肪組織より分離した脂肪組織由来幹細胞(Adipose Derived Stem Cell:ADSC)を比較検討した。さらに,代表的な炎症性サイトカインであり,IBDとも深く関連するTNF-αのADSCsに対する影響について,マウスADSCsを用いて検討した。皮下脂肪組織1g中の間質血管細胞(stromal vascular fractions:SVF)数はIBD患者7.72±3.03×10^5,非IBD患者8.51±8.80×10^5であり両群間に差はなかった。分離直後のSVFsに含まれるADSCsはIBD患者4.98±2.61%,非IBD患者1.02±0.67%とIBD患者で有意に多かった。皮下脂肪組織1g中のADSCs数はIBD患者4.16±2.96×10^4,非IBD患者0.88±1.04×10^4とIBD患者で有意に多かった。マウスADSCsの増殖能はTNF-αの添加により有意に亢進した。TNF-αと共培養した24時間後に加えて,TNF-αを除いた48時間後においても有意に高い細胞増殖を示した。Wound healing assayでは,TNF-αを添加して培養することによりmurine ADSCsの運動能は有意に亢進した。本研究の結果は,IBD患者において分離直後の自己由来ADSCsを直接治療に用いるような状況を想定した場合は,健常人に比較して有利な要素があることを示唆しており,治療の有効性を期待させる結果であると考えられる。
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