研究課題
進行大腸癌に対する抗EGFR療法の効果はRAS野生型の患者に限られているため、生検サンプルなどあらかじめ癌組織の遺伝子検査を行い、適用のある患者を選別する必要がある。RAS変異は抗EGFR治療中にも獲得されることが認識され、獲得耐性の重要なメカニズムの一つである。血液中から低頻度の変異クローンを検出できれば、原発巣が野生型の患者が治療経過中変異を来した場合、無益な治療の継続を回避することが可能となり、診断精度の改善および費用対効果の改善につながることが期待される。本研究では、従来の検査の感度を向上させることで血液検体を用いた非侵襲性RAS変異検査を確立し、病勢モニタリングや耐性変異を標的とする新しい分子標的薬の適用決定など新しい用途の研究開発を行うことを目的として立案された。本研究施行にあたり、高度進行大腸癌の標本(原発巣、生検サンプル、全血)は、札幌医科大学および大阪大学とそれぞれの基幹関連施設から集積し、保管するシステムを構築した。また次世代シーケンサーを用いた血漿中大腸癌由来変異DNA検出法の確立するため、実験系のバックグラウンドノイズを測定し、大腸癌サンプルのゲノムDNAを用いて条件設定した。まずは遠隔転移を有する10例を対象としてKRAS変異の相同性について検証した。サンプルにより、組織、術前血漿でのmutationの割合が高く、術後の血漿においては、mutationが少なくなっていることが確認された。これらの結果は、薬剤感受性、病態などを予測するのに重要な情報を与えると考えられる。また組織からのDNAを活用して、KRASとCancer Panel(他の遺伝子)で変異を調べるとともに、血漿サンプルについてPCRでの増幅可能性につき検討した。以上のように、血液中のcfDNA(セルフリーDNA)の解析により、大腸癌組織の変異を検出できる可能性が示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Oncotarget
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10.18632/oncotarget.22545
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