研究実績の概要 |
大腸癌症例の非癌部腸管(正常部)を採取し、粘膜固有層内の単核球を分離しFACSにより細分化した。Lin(CD3,CD19,CD20,CD56)陰性HLA-DR陽性細胞をCD103とCD14で展開し、CD103+CD14-細胞に着目しCD14+CD103-細胞と比較しながら、機能を解析した。CD103+CD14-細胞はMay-Giemsa染色により樹状突起をもつ樹状細胞、CD14+CD103-細胞は貪食能をもつマクロファージであることを確認した。CD103+CD14-細胞は、CD14+CD103-細胞に比較してBATF3,IRF8,IRF4の転写因子が高発現であることを確認した。炎症性サイトカイン(IL-6,IL-23,TNF-α)の発現は、CD103+CD14-細胞では有意に低かったが、抗炎症性サイトカイン(IL-10,TGF-β)の発現は同程度認めた。 潰瘍性大腸炎の非炎症部腸管と炎症部腸管から粘膜固有層内の単核球を分離しFACSにより細分化した。正常部腸管から採取したCD103+CD14-細胞と潰瘍性大腸炎の非炎症部腸管と炎症部腸管から採取したCD103+CD14-細胞を比較した。炎症性サイトカイン(IL-6,IL-12,IL-23,TNF-α)の発現は、正常部に比較して、潰瘍性大腸炎の非炎症部、炎症部では上昇していた。抗炎症性サイトカイン(IL-10,TGF-β)の発現は同程度認めた。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究で、CD14+CD103-細胞に比較してCD103+CD14-細胞では、炎症性サイトカインの発現は低いが、抗炎症性サイトカインの発現は同程度であることが分かった。また正常部腸管と潰瘍性大腸炎の非炎症部、炎症部腸管に存在するCD103+CD14-細胞では、炎症性サイトカインの発現に差を認めた。今後もこの研究結果を踏まえてCD103+CD14-細胞に着目して研究をすすめていく。 CD103+CD14-細胞とCD14+CD103-細胞をTLR刺激下で培養することにより、サイトカイン産生をELISAで解析する。 CD103+CD14-細胞のNaiveT細胞の誘導能を検討する。正常部腸管から採取したCD103+CD14-細胞とCD14+CD103-細胞を末梢血中からFACSにより採取したNaiveT細胞と共培養し、Treg細胞(Foxp3の細胞内染色),Th1細胞(IFN-γの細胞内染色),Th17細胞(IL-17の細胞内染色)の誘導能を比較検討する。また、培養液中のサイトカインをELISAを用いて解析する。 同様のことを潰瘍性大腸炎の非炎症部、炎症部腸管から採取したCD103+CD14-細胞でも行う。Treg細胞,Th1細胞,Th17細胞の誘導能や培養液中のサイトカインを正常部のCD103+CD14-細胞と比較することにより、炎症性腸疾患(特に潰瘍性大腸炎)患者におけるCD103+CD14-細胞の腸管免疫における役割について考える。
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