大腸癌非癌部をコラゲナーゼとディスパーゼを用いて酵素処理によって細胞単離し、FACSによりCD14、CD11c、HLA-DRなどで展開することによってCD14+細胞およびCD14-CD11c+細胞を単離した。顕微鏡下に観察するとCD14+細胞は細胞質内に空胞を伴うマクロファージ様形態を示し、CD14-CD11c+細胞は樹状突起を認める樹状細胞様形態を示すことが分かった。cDNAを用いたqPCRの解析の結果、CD14+細胞はIL-6、IL-23Aなどの炎症性サイトカインを産生しているがCD14-CD11c+細胞は炎症性サイトカインを産生しないことが分かった。また、CD14+細胞はナイーブT細胞をIL-17産生T細胞に誘導するが、CD14-CD11c+細胞はFOXP3陽性のTreg細胞に分化誘導することが分かった。IFNgに関しては両者に差を認めなかった。潰瘍性大腸炎症例においてこれらの解析を行った。潰瘍性大腸炎症例においてはCD14-CD11c+細胞が減少しており、CD14-CD11c+細胞のTreg誘導能は減弱していた。また興味深いことに潰瘍性大腸炎の非炎症部においてもCD14-CD11c+細胞比率は低下しており、CD14-CD11c+細胞のTreg誘導能は減弱していた。これらのことから、潰瘍性大腸炎における表層性の炎症には粘膜固有層に存在するCD14-CD11c+細胞が関与しているのではないかと示唆された。
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