研究課題
大腸癌ではBRAF変異+Non-MSI癌が極めて予後不良であることが示されているが、BRAF変異を示さない大腸癌においてもBRAF変異+Non-MSI癌と同様に予後不良な経過を示す大腸癌群の存在が報告されている(Popovici V et al, JCO 2012)。我々はBRAF変異+Non-MSI癌に強く発現増加・低下を認めるmicroRNA(miRNA)群を同定した。本研究は、それら発現増加群をGroup A、 発現低下群をGroup Bと定義し、❶ Group A miRNAを用いた新規診断マーカーの開発とRAS-RAF cascade positive feedbackの証明❷ Group B miRNAを用いた新規核酸医薬開発の基礎的検討を行うことを目的とする。❶凍結組織を利用可能であった68例のStageIV大腸癌患者に対しGroup A miRNAの発現検討を行い,後方視的に予後解析を行ったところ,当初の仮説通り,Group A miRNAの高発現群は統計的有意差を持って予後不良であることが示された。❷大腸癌Cell lineに対し,Group B miRNAの発現をRT-qPCRで評価を行い,今後の研究対象の選別を行った。HT29(BRAF変異+Non-MSI)とHCT116(KARS変異+MSI)を対象に今後の検討を行う方針とした。まず,Group B miRNA群は両Cell lineで発現は有意に低下していることを確かめた後に,Group B miRNA群5種類を用いてトランスフェクションを行い,その導入されたmiRNA群の発現持続がいつまで続くのかを測定を行い,間欠投与によるCell viabilityの変化の確認を行った。まずCell viabilityの変化の確認に先立ち,導入されたmiRNA群の発現量の経時的変化の測定,発現量が増加している時期の蛋白を抽出し,それらmiRNA群のターゲットと考えられている転写因子ZEBsの発現量の検討,およびそのZEBsのターゲットであるE-Cadherinの発現量の変化も併せてWestern Blottingにて確認を行い,現在までに仮説通りの結果を得ている。
2: おおむね順調に進展している
おおむね予定通りに進んでいる。特に,❷ Group B miRNAを用いた新規核酸医薬開発の基礎的検討 に関しては予定よりもかなり順調に進んでいると考えられる。
❶凍結組織を利用可能であった68例のStageIV大腸癌患者に対しGroup A miRNAの発現検討を行い,後方視的に予後解析を行ったところ,当初の仮説通り,Group A miRNAの高発現群は統計的有意差を持って予後不良であることが示された。この結果は非常に重要な知見であるため,現在,論文化を進めている。平成27年までに投稿を行う予定とする。❷ Group B miRNAを用いた新規核酸医薬開発の基礎的検討に関しては,5種類のGroup B miRNA単独,または数種類を組み合わせて間欠的にてトランスフェクションを行い,Cell viabilityの変化の確認を行う予定である。Cell viabilityの変化が認められた場合は,新規核酸医薬としての臨床応用の可能性が広がるものと期待している。
26年度に要した試薬が予定よりも低価格で購入できたため。
来年度の試薬購入費に充てる。
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